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出典: PubMed

ドイツの若年成人を対象にした研究で、小児期の身体的虐待や情緒的虐待の経験と、脳の皮質や左扁桃体の構造との関連が調べられました。身体的虐待などは大脳皮質の薄さと結びつき、女性では情緒的虐待を含む経験と左扁桃体の小ささが関連しました。関連の現れ方は経験の種類や年齢、性別によって異なり、日常生活の機能との結びつきも一様ではありません。

身体的虐待などと皮質の薄さが関連

研究対象は、気分や不安の症状などがあり、ドイツの大学病院や早期発見施設を訪れた17〜35歳の251人です。平均年齢は約25歳で、男性130人、女性121人でした。参加者は小児期の虐待やネグレクトを尋ねる質問票に回答し、構造MRIで脳の皮質や扁桃体などを測定しました。

質問票は、身体的・情緒的・性的虐待と、身体的・情緒的ネグレクトを扱う28項目で構成されます。回答には、つらい経験を小さく見せたり否定したりする傾向を捉える項目も含まれていました。研究チームは項目を一つの総合点にまとめず、年齢、性別、質問票の回答と182項目の脳測定値を組み合わせて分析しました。

一つ目のパターンでは、年齢が高いこと、重い身体的虐待、経験を強く否定する回答が、左右の大脳皮質の薄さと関連しました。身体的虐待の設問は、教師や近隣住民、医師に気づかれるほどひどく殴られた経験を尋ねるものです。この関連は参加者間の差を示し、時間の経過に伴う脳組織の減少を測ったものではありません。また、この皮質のパターンは、1年後や2年後の日常生活の機能を予測する統計的な関連を示しませんでした。

女性では左扁桃体の一部にも関連

二つ目のパターンでは、女性であることと情緒的虐待の程度が、左扁桃体の体積の小ささに関連しました。身体的虐待、情緒的ネグレクト、性的虐待もパターンに関わりましたが、寄与はより小さく、女性であることの重みが最も大きくなりました。関連は左扁桃体全体に加え、基底核、傍層核、副基底核の体積に見られました。

女性参加者の平均的な日常生活機能の得点は、開始時の62.6から1年後に69.6、2年後に72.0へ上昇しました。一方、情緒的虐待のパターンが強い女性は、1年後と2年後の機能得点が低い傾向にあり、2年後の関連は開始時の得点を考慮しても認められました。扁桃体の体積が小さいことと2年後の機能が当初は関連しましたが、開始時の機能を考慮すると統計的に有意ではなくなりました。

研究では、情緒的虐待の得点が高い女性のうち、左扁桃体が小さい群と大きい群を分類する分析も行われました。極端な得点を示した女性各26人を対象に、17の臨床・診断指標を用いた分類の正解率は69.2%でした。対象を中央値で分けた場合には結果が保たれず、男性のモデルを上回る統計的な精度も確認されませんでした。

研究ごとに異なる脳の測定結果

対象者や分析方法の違いによって、小児期の虐待と脳構造の関連として現れる部位や方向は異なります。3,711人を扱ったENIGMAの分析では、18〜35歳の若年成人で虐待と視床・淡蒼球の大きさ、帯状回や前頭回などの皮質厚との関連が報告されました。女性では虐待やネグレクトと海馬・被殻の小ささなど、男性では虐待と広範な皮質厚・表面積の変化が関連し、小児の参加者では有意な関連がありませんでした。

この分析には、うつ病や心的外傷後ストレス障害の研究グループに属する25施設の参加者が含まれ、脳の測定値は集団の標準値からの偏差として評価されました。年齢層と性別ごとに関連を調べており、単一の若年成人群で質問票の個別項目を脳測定と組み合わせた今回の研究とは、対象と分析単位が異なります。皮質や深部構造の結果は、対象者の年齢・性別構成や測定・分析方法に応じて異なる形で現れています。

13〜20歳の虐待経験者22人を調べた別の研究では、薬を服用していない若者を、精神疾患のある対照群19人と健康な対照群27人と比較しました。健康な対照群との比較では、虐待経験者の複数の領域で皮質体積や皮質厚が小さく、側頭葉の一部では体積が大きい結果も報告されました。精神疾患の影響を区別するために対照群を設けたことや、若年者に対象を絞ったことが、成人を含む大規模分析や今回の研究との違いです。

扁桃体の下位領域と感情処理

扁桃体は複数の下位領域から成り、領域ごとに入力・出力先や働きが異なります。基底核と副基底核は、外側核とともに基底外側扁桃体複合体を構成し、感覚や社会的刺激への反応を予測・調整する回路に関わります。この複合体は前頭前野や眼窩前頭皮質とつながり、ストレス反応を担う視床下部・下垂体・副腎系にも情報を送ります。

傍層核は感情処理に関わる領域とされ、霊長類では比較的大きく、細胞の密度や未成熟に見える細胞などの特徴が報告されています。傍層核は過去には基底核の一部とみなされていましたが、解剖学的特徴や発達上の性質から独自の領域として検討されています。今回の研究では、この領域を含む左扁桃体の一部の体積が、女性の情緒的虐待を含むパターンと関連しました。

別の研究では、自閉スペクトラム症の子どもを含む234人を調べ、基底核と傍層核の体積が不安の指標と関連することが報告されました。基底核の体積は自閉スペクトラム症の子どもの不安得点を予測し、傍層核の体積にも関連が見られました。

今回の脳画像は研究開始時の一度だけ撮影されました。特に皮質のパターンでは、その後の機能との統計的な関連が認められず、左扁桃体の結果も分類分析では限定的でした。