ウイルスや細菌などの感染症が、2024年に世界で診断された新規がん症例の約12%、約230万件に関与したとする分析が発表されました。感染関連症例の約92%は4種類の病原体によるもので、ワクチンや感染治療が予防策として挙げられています。
感染関連がんの大半を占める4種類の病原体
分析は、がんの発生に関係する12種類の病原体を対象に、世界のがん登録データなどから2024年の症例数を推計しました。最多は胃の粘膜に感染する細菌、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)による約76万件で、主に胃がんでした。続いてヒトパピローマウイルス(HPV)が約75万件、B型肝炎ウイルスが約36万件、エプスタイン・バーウイルス(EBV)が約26万件でした。
ピロリ菌は胃の粘膜に慢性的な炎症を起こし、粘膜の萎縮や、胃の細胞が腸に似た細胞へ置き換わる腸上皮化生につながることがあります。これらは胃がんの前段階となり得る変化です。2026年のレビューは、感染が炎症を始めるだけでなく、一部の人では腸上皮化生や異形成(細胞の形や並びに異常がある状態)など、その後の進行にも関わるとする疫学研究や動物実験の知見をまとめています。
ただし、ピロリ菌に感染した人の大半が胃がんになるわけではありません。レビューによると、感染者のうち胃がんに至るのは約1〜2%です。日本の医療制度では、ピロリ菌検査で感染が確認されると、薬による除菌治療が行われます。除菌でリスクは下がりますが、感染中に蓄積した胃粘膜の変化が残ることがあり、治療後も胃がんが発生する場合があります。
予防策の普及には地域差
病原体ごとに予防手段は異なります。HPVとB型肝炎にはワクチンがありますが、2024年にHPVワクチンを少なくとも1回接種した対象年齢の女子は世界全体の31%で、世界保健機関(WHO)が掲げる90%の目標を下回りました。感染に起因するがんの77%は低・中所得国で発生し、HPV関連がんの約81%もこれらの国々に集中していました。
日本では2013年にピロリ菌除菌が保険適用となり、国立がん研究センターなどによると、これまでに1,000万人を超える人が除菌を受けています。除菌後も年率0.5〜1.2%程度で胃がんが発生するとされ、対策型検診では2年に1回の胃がん検診が推奨されています。からだケアナビが紹介する検査・治療の流れでは、感染の有無を呼気、血液・尿、便、または内視鏡検査時の生検などで調べ、陽性の場合は抗菌薬などを服用した後、検査で除菌を確認します。
除菌後の検診間隔をリスクに応じて調整する研究も進んでいます。星薬科大学と国立がん研究センターの前向き研究では、ピロリ菌除菌後で胃粘膜の萎縮がある健康な人を追跡し、1回以上の追跡を受けた1,624人のうち27人に胃がんが発生しました。胃粘膜のDNAメチル化レベルが最も高い4分の1の人は、最も低い4分の1の人と比べ、初発胃がんのリスクが7.7倍でした。
DNAメチル化は、遺伝子の働きを調節する仕組みの一つです。研究チームは、胃がんリスクマーカーであるRIMS1遺伝子のメチル化レベルが25.7%を超える人を特に高リスクとする目安を示し、この層では毎年の内視鏡検査が有効となる可能性を挙げました。このリスク判定法は実用化に向けた検討が始まっています。
一方、EBVには承認済みのワクチンがなく、複数のたんぱく質を使って細胞に侵入し、体内に長くとどまる性質が開発上の課題とされています。ピロリ菌については、集団検査と治療が胃がん予防策として研究され、ワクチン開発も課題に残っています。











