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写真: Shixart1985 / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons

QMP改変アルブミンで狙う粘膜送達

鼻腔などの粘膜から薬を吸収させる方法は、注射を使わずにタンパク質製剤を届ける手段の一つです。ただし、補助なしで粘膜から薬を吸収させる効率は低く、細胞を通過させる仕組みと血中での持続性の両方が課題です。

研究チームは、血液中に多く存在するヒトアルブミンに3か所のアミノ酸置換を加えた変異体「QMP」を設計しました。置換箇所はE505Q、T527M、K573Pで、新生児Fc受容体(FcRn)への結合を高める狙いがあります。

ヒト上皮細胞を使った実験では、アルブミンはFcRnに依存して細胞層を通過しました。QMPを結合したタンパク質は、鼻腔内投与後に細胞を通過しやすくなり、ヒトFcRnを発現するマウスではアルブミンの血中半減期も延びました。

FcRnがアルブミンを回収して運ぶ仕組み

FcRnは細胞内でアルブミンと結合し、分解経路に送られるのを防ぎます。その後、アルブミンは再利用されたり、細胞間を輸送されたりします。アルブミンとの結合は酸性環境で強まり、生理的なpHでは弱まるため、細胞内への取り込みと細胞外への放出を切り替えられます。

この仕組みは、アルブミンが血中で長く保たれることにも関わります。成人の細胞にもFcRnが存在し、アルブミンを細胞内分解から保護するとともに、上皮などの細胞層を越えて運びます。

アルブミンの性質が変わると、FcRnとの結合も変化します。グルコースやメチルグリオキサールで糖化したアルブミンは、pH 6.0でFcRnへの結合が弱まりました。構造解析では、糖化に伴う変化がFcRn結合領域にも及んでいました。アルブミンを薬の運搬に使う際は、受容体との結合特性が輸送に関わります。

第VII因子融合体で確認された半減期の変化

研究チームは、血液凝固に関わる活性化第VII因子(rFVIIa)をQMPに結合した融合体を作製しました。マウスで測定した融合体の血中半減期は、野生型ヒトアルブミンを結合した場合の3.6倍でした。

半減期を延ばす改変によって、第VII因子の治療特性は損なわれませんでした。血友病Bのマウスモデルでは、QMP融合体が第VII因子の機能を保っていました。

QMPは、タンパク質製剤の運搬体として、血中での持続と粘膜を越える輸送の双方に関わる可能性があります。研究チームは大動物モデルでの追加検証が必要だとしています。

鼻腔への応用で考慮される組織差

FcRnを介した鼻腔送達に関する系統的レビューでは、758件を調べ、12研究を採用しました。そのうち11研究で、生物製剤が効率的に上皮を通過しました。対象研究では、FcRnが鼻腔や嗅上皮に発現し、IgGまたはIgG由来分子の輸送に関わる可能性が検討されています。

鼻腔内投与後の毒性を評価した研究は3件で、いずれも安全性を示す結果でした。

別の鼻腔研究では、ブタ由来の嗅上皮細胞と摘出粘膜、ヒト由来細胞株を用いて、ヒトとブタのIgGの通過を比較しました。FcRn発現が最も高いブタ嗅上皮細胞では、両種のIgGの透過率は同程度でした。一方、摘出粘膜ではブタIgGは基底側で痕跡量にとどまり、ヒトIgGはより高い量に達しました。ヒトIgGの脱糖鎖型は、細胞モデルで野生型より有意に高い透過率を示しましたが、摘出組織では差が有意ではありませんでした。動物種や組織モデル、分子の性質によって、FcRnを利用する鼻腔送達の結果が異なりました。