
米国では、サイケデリック薬の治療利用をめぐり、FDAによる薬事審査に加えて、安全に製造・保管・投与する仕組みが論点になっています。通常診療への導入には、薬の有効性や安全性を示すだけでなく、規制物質の管理や臨床現場の体制も関わります。
治療ニーズと提供体制の課題
9月14日、FDAは4時間の公開討議を開き、80人を超える登壇者が規制下でのサイケデリック治療について意見を述べました。議論では、治療の可能性に加え、再分類や薬事承認後の提供体制も課題に挙がりました。
米国では、成人の6,200万人超が精神疾患を抱えています。大うつ病性障害の治療を受ける患者の約3分の1は薬で意味のある改善が得られず、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の第一選択治療でも、平均して40%が反応しないとされています。
2022年に『New England Journal of Medicine』で公表された試験では、心理的支援と併用した25ミリグラムのシロシビン単回投与により、治療抵抗性うつ病の症状が大きく軽減しました。オレゴン健康科学大学が公表した実臨床研究は346人と認可サービスセンター24カ所を対象とし、参加者はうつ、不安、PTSDの症状軽減を報告しました。
FDA審査が見る臨床試験と製造
FDAの2026年7月のガイダンスは、シロシビンやLSDなどの古典的サイケデリック薬と、MDMAなどを含む臨床試験の考慮事項を示しています。対象は治験薬申請(IND)の下で行われる試験で、販売承認を直接与える文書ではありません。
FDAは治験薬について、識別、品質、純度、力価を確保するために十分な製造・品質管理情報を求めています。第2相以降の試験に使う薬剤は、適用される医薬品製造管理基準(CGMP)に従って製造する必要があります。
FDAは、サイケデリック薬の臨床試験で、有効性と安全性を特有の課題を踏まえて評価するよう推奨しています。FDAのガイダンスは法的拘束力のある要件ではなく、当局の現時点の考え方や推奨を示すものです。
DEAの管理と臨床現場の安全策
FDAの薬事審査と、DEAが担う規制物質の管理は別の手続きです。PATH Caucusへの回答をまとめた報告書によると、米国でサイケデリック薬は連邦法上スケジュールIに分類され、研究にはFDAとDEAなどの承認が関わります。手続きに1年以上かかる場合もあります。
臨床試験を行う研究者には、スケジュールI薬を扱うためのDEA登録が必要です。FDAへの新薬承認申請では、乱用可能性の評価も必要な要素とされています。
FDAの試験ガイダンスは、試験で薬を投与する際の安全確保も扱います。Baker Donelsonの解説によると、最終ガイダンスは投与セッションごとに訓練を受けた監視担当者2人を求め、責任者が医師でない場合は、緊急時に15分以内に現場へ到着できる医師を確保するよう定めています。
オーストラリアの制度と米国への示唆
オーストラリアでは、2023年7月から、治療抵抗性うつ病向けのシロシビンが条件付きでスケジュール9から8へ変更されました。処方できるのは、倫理審査委員会(HREC)の承認を得たうえで、TGAの認定処方医制度(AP制度)の認可を受けた精神科医です。
この制度で使われる薬は、オーストラリア医薬品登録簿(ARTG)に登録されていない未承認薬です。未承認薬へのアクセス制度は、TGAによる安全性、品質、有効性の評価を意味しません。
米国の制度設計について報告書に寄せられた回答では、州ごとに異なる訓練要件、同意手続き、有害事象の監視、施設認可があると整理されています。回答者からは、患者の地域によってアクセスが過度に制限されない仕組みや、治療の利益と予期しない影響を追跡する全国的なデータ基盤を求める声がありました。
Optimi HealthのCEO兼共同創業者は、オーストラリアでは処方から投与まで医師の監督下に置き、薬剤の受け渡しを各段階で記録する運用を紹介しました。同社はオーストラリア、カナダ、英国の臨床現場向けに製造・供給しており、これまで世界の患者と臨床研究向けに5,000回分超を供給したとしています。











