
ブジヴァロヴァ氏が10回目の賞を受賞
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の環境・持続可能性研究所は10月8日、森林の音を使って生物多様性を調べる研究者、ズザナ・ブジヴァロヴァ氏に「プリツカー新進環境リーダー賞」を授与しました。ブジヴァロヴァ氏は2026年の受賞者で、同賞は今回で10回目となります。
賞金は10万ドルです。ウィスコンシン大学マディソン校の准教授で、Sound Forest Labを率いるブジヴァロヴァ氏は、音響データを保全活動に活用する研究に取り組んできました。
ブジヴァロヴァ氏は、賞金を健全な森林の音を記録する「Soundscape Baselines Project」の拡大に充て、現地の科学者や地域社会との協力を増やしたいと述べています。また、音の基準データを活用した保全プロジェクトの事例も集める考えです。
鳥やカエルを含む森林の音を記録
ブジヴァロヴァ氏と同僚は、森林に自動録音機を設置し、鳥、両生類、昆虫、哺乳類などの音を長期間にわたって収集します。生物音響学は、生物が発する音を記録・分析して生態を調べる手法です。
録音を続けると、その場所で生物がどのような音を発しているかを基準として記録でき、時間の経過に伴う変化を比較できます。ブジヴァロヴァ氏は鳥類だけでなく、複数の分類群を含む音風景全体を分析します。
Soundscape Baselines Projectは、各地の森林で音の基準データを作る取り組みです。現地の科学者や地域住民、保全活動家と協力し、36か所の森林でそれぞれ1年間、音風景を記録しています。
長期間の録音を比較の基準に
プロジェクトでは、音に加えてカメラトラップやリモートセンシングも使います。カメラトラップは野生動物を自動撮影する装置です。リモートセンシングでは、離れた場所から森林の状態を捉えます。
基準データは、保全活動の前後で森林の生物多様性がどう変化したかを比較するために作ります。録音は24時間、1年間続け、昆虫、カエル、鳥、哺乳類などの音を対象にします。
音響調査の結果を生物多様性の推定に結びつけるには、録音の時間帯や間隔も関わります。ブラジル・アマゾン東部の29地点を調べた研究では、15秒の録音を240回に分ける方法と、15分の録音を4回行う方法を、同じ調査時間で比較しました。
調査方法によって検出結果が変わる
同研究では、短い録音を時間帯に分散させる方法が、検討したすべての指標で上回りました。この方法では、鳥類の種数が地点内で約50%、調査地域全体で約10%多く検出されると推定されました。
録音の間隔を広げると、種がいるのに見つからない「見落とし」が少なくなりました。複数回の独立した検出を使った場合、珍しい種も従来の方法の3倍検出されました。
奄美大島の亜熱帯林で行われた別の研究では、録音地点から固有の森林性鳥類9種が検出されました。研究者らは、そのうち4種について生息確率と環境要因を分析しました。
この研究では、音響モニタリングと占有モデルを組み合わせ、鳥の分布と生息環境との関係を調べています。占有モデルは、調査で得た検出記録などから、種が特定の場所を利用している確率を推定する手法です。
音響調査の限界と保全への利用
音響モニタリングでは、鳴き声を出さない動物や、録音機が捉えられる周波数の範囲外で鳴く動物を記録できません。オーストラリア東部の哺乳類を調べた研究では、音響データをカメラトラップや現地観察の結果と比較しました。
同研究は6地点で計31万7,410時間の録音を分析し、対象とした鳴く哺乳類17種すべてを検出しました。哺乳類全体では現地観察、カメラトラップ、音響モニタリングの順に成績が高く、鳴く哺乳類に限ると各手法の成績は同程度でした。
熱帯林の保全では、音を使った調査により動物の生息状況だけでなく、人間活動も把握できます。森林ゾウを扱った研究は、音響モニタリングで行動や個体数、脅威、保全策の効果を調べる方法を紹介しました。
具体的には、銃声の位置を捉えて対策チームの配置に役立てる方法や、密猟活動、巡回の効果を記録する方法が挙げられています。音風景の複雑さの変化を生物多様性の変化と照らし合わせる方法も、保全調査の選択肢として紹介されています。
ガボンのマサハ地域では、ブジヴァロヴァ氏の音響データが、先祖伝来の森林に独自の生物多様性があることを示す科学的根拠となりました。地域住民はその根拠をもとに伐採計画を止め、同国初の地域保全区域を設けました。










