
米政府、イボガインの臨床試験に向け意見募集
米政府は、オピオイド依存症と心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療を目的に、幻覚作用のある薬物イボガインを使う初の政府資金による臨床試験を進めています。米食品医薬品局(FDA)は、試験設計や用量、参加者の条件、安全性の監視方法などについて意見を募り、締め切りを11月20日としました。
イボガインは、アフリカ原産の低木イボガの根に由来する幻覚作用のある化合物です。薬物依存などへの治療法として研究されており、身体的なリスクとして致死的な不整脈が挙げられています。
この取り組みは、トランプ大統領が昨年4月に署名した大統領令に基づき、連邦政府のイボガイン研究に5,000万ドルを充てる方針を受けたものです。幻覚薬を用いる治療について、専門家や退役軍人から安全基準を求める声が上がるなか、FDAは試験開始前に設計や監督のあり方を検討しています。
イボガインは、アフリカ原産の植物に含まれるインドールアルカロイドです。依存症治療の候補として研究されてきました。今回の政府主導の試験では、治療効果とリスクを臨床的に評価します。
既存治療より限られる臨床データ
イボガインの臨床的な根拠は、メサドンやブプレノルフィンなど既存の治療法に比べて限られています。比較資料によると、既存薬ではランダム化比較試験を含む研究が行われている一方、イボガインの根拠は主に観察研究や小規模な臨床試験です。

ニュージーランドで行われた観察研究では、14人にイボガインを1回投与し、治療前から12カ月後まで依存症の重症度などを調べました。研究では、薬物使用とうつ症状のスコアが12カ月後までに低下し、離脱症状のスコアも投与直後に低下しました。
この研究は14人を対象にした観察研究で、既存薬の比較試験と同じ規模や方法で効果を確かめたものではありません。既存治療との直接比較を裏付ける、同程度の強さの証拠もありません。
心臓への影響が安全性の課題
イボガインには心臓への安全性に関する懸念があります。レビューでは、心筋のイオンチャネルであるhERGカリウムチャネルの阻害と、それに伴うQT間隔の延長が、治療上の安全域を狭める要因として挙げられています。
同レビューは、心臓への有害作用に加え、神経毒性の懸念や、製剤の標準化、規制枠組みの不統一も臨床応用の課題としています。イボガインが体内でノリボガインに代謝される過程には個人差があり、CYP2D6という代謝酵素の遺伝的な違いが、薬への曝露量や毒性に関係すると説明しています。
レビューによると、欧州連合(EU)ではイボガインを含む医薬品は承認されておらず、国際保健機関(WHO)も安全性と有効性を示す強固な臨床データが不足していると指摘しています。FDAが意見を求めている安全性の監視方法や試験中止の基準は、こうしたリスクを踏まえた試験設計の一部です。
アストラゼネカ、ケンドール・スクエアに研究拠点
アストラゼネカは、米マサチューセッツ州ケンブリッジのケンドール・スクエアに研究開発(R&D)拠点を開設しました。施設は18階建てで、研究室とオフィスを合わせて57万平方フィートの広さがあります。
新拠点は、同社が州内で進める10億ドルの投資計画の中心です。同社はこの投資計画を2024年に発表し、翌年、米国への投資を約500億ドルに拡大しました。
ケンドール・スクエアはマサチューセッツ工科大学(MIT)に隣接し、ブロード研究所も地区内に拠点を置いています。ハーバード大学やMITなどの研究機関が集まるボストン・ケンブリッジ地域では、大学と企業の近接が知識移転や共同研究を支えています。
この地域には、2024年時点でバイオテクノロジー企業が約1,000社あり、バイオ医薬品分野の雇用者は117,108人とされています。ケンドール・スクエアだけでも100を超える新興企業やGoogle、ノバルティスなどの大企業が集まり、研究室の面積は1,000万平方フィートを超えます。











