A split-screen microscopy image showing neurons with green fluorescent axons and dendrites against a black background with blue stained cell nuclei.
出典: newsroom.ucla.edu

UCLAの研究チームは、皮膚細胞を短時間圧縮してDNAを開きやすくし、CRISPRaで遺伝子を活性化する手法を開発しました。マウス細胞では、事前に細胞を準備する工程を加えると、ニューロンになった細胞の割合が約40%に上がりました。この手法は、細胞の種類を変える研究や薬剤試験への応用が考えられます。今回の結果はマウス細胞で得られました。

DNAの開きやすさが細胞変換を左右

皮膚細胞とニューロンは同じゲノムを持ちますが、使われる遺伝子は異なります。DNAは細胞核の中でタンパク質とともに折りたたまれています。皮膚細胞で通常使われない神経関連の遺伝子には、CRISPRなどの分子が届きにくいことがあります。

細胞リプログラミングは、ある種類の細胞を別の種類へ変える操作です。病気の仕組みを調べたり、薬の試験に使う細胞を作ったりする用途が考えられます。従来の変換では、目的の細胞になる割合が低いことが課題でした。

今回の手法では、細胞をミリ秒単位で圧縮してDNAの一部を一時的に開き、遺伝子活性化ツールをその領域へ誘導します。圧縮だけでは細胞の種類は変わらず、遺伝子を活性化するCRISPRaと組み合わせて変換を促します。

圧縮後に開いたDNA領域を標的に

CRISPRaは、DNA配列を切断せずに標的遺伝子の働きを高める手法です。ガイドRNAが標的の位置へ案内し、DNAを切断できないようにしたCas9タンパク質などに結合する活性化因子が、遺伝子の転写を促します。転写とは、遺伝子の情報をRNAへ写し取る過程です。

研究チームは、圧縮によってゲノムのどの領域にアクセスしやすくなるかを調べ、その情報をガイドRNAの標的選びに利用しました。圧縮で開いた領域を狙い、細胞の種類を決める遺伝子をより効率よく活性化することを目指しました。

この手法はMECA(機械的に強化したCRISPR媒介活性化)と名付けられました。研究では、成人マウスの皮膚細胞に、CRISPRaとガイドRNAを短時間作用するRNAとして導入しました。翌日、細胞をマイクロ流体チップへ通して圧縮しました。

約3%から約40%へ上がった神経細胞化率

圧縮とCRISPRaを組み合わせると、神経細胞化を促す遺伝子Ascl1とBrn2の活性が高まりました。この条件でニューロンになった細胞は約10%で、CRISPRaのみの場合の約3%を上回りました。

チームはさらに、幹細胞の柔軟性に関わるOct4を活性化し、皮膚細胞を幹細胞に似た状態へ部分的に移行させました。その後にAscl1とBrn2を活性化すると、ニューロンになった細胞の割合は約40%となりました。

この事前工程では細胞分裂が増え、DNAの折りたたみも緩んでいました。研究チームは、細胞を変化しやすい状態に整えてから神経関連遺伝子を働かせる手順として、この結果を示しています。

機能評価と今後の検証

誘導した細胞を薬剤試験に使うには、形や生存率に加え、神経としての活動も評価できます。神経細胞間の情報伝達はシナプスで起こり、神経伝達物質が受け手側の受容体を活性化して、電気的な応答などにつながります。

VitroVoの受託試験では、微小電極アレイ(MEA)で神経細胞の電気活動を測定し、単一細胞からネットワークまで評価します。発火の頻度や同期性、細胞間の結合、軸索の伝導速度などを指標にできます。

VitroVoの試験では、薬効や作用機序、安全性を調べる際に、電気活動のほか、遺伝子発現や形態などを組み合わせる場合があります。UCLAのチームは今後、ヒト細胞の変換にもMECAが使えるか、得られた細胞が薬剤試験や移植に必要な機能を備えるかを調べる予定です。