
胸骨への振動を加えたマインドフルネス瞑想を受けたトラウマ経験者では、身体への意識が改善し、脳の白質の一部で神経突起密度が増加しました。116人を対象とした研究では、振動を加えない瞑想と比べて、解離症状の変化にも違いがありました。これは進行中の臨床試験の中間解析です。
振動を加えた瞑想で身体意識が改善
解離は、自分の身体や周囲から切り離されたように感じる症状です。内受容感覚は、心拍や呼吸など体内からの信号を感じ取る働きです。研究チームは、内受容感覚を高める方法として瞑想に着目しました。
研究には、トラウマ経験があり、解離症状の程度が高い成人116人が参加しました。うち60人は胸骨への振動を加えた瞑想を受け、56人は振動なしで瞑想しました。全員が数週間にわたり、計8回のセッションを受けています。
振動を加えたグループでは、振動なしのグループに比べ、身体への意識がより改善しました。一方、自己申告による解離症状は両グループで同程度に低下しました。振動を受けた人では、解離の低下と白質の変化が関連していました。
左大脳脚と皮質脊髄路で見られた変化
研究チームは、介入の前後に拡散MRIを使って白質の微細構造を調べました。白質には脳内の領域をつなぐ神経線維が含まれます。今回の解析では、神経突起の密度を示す指標を用いました。
振動を加えたグループでは、皮質脊髄路の一部である左大脳脚で神経突起密度が増加しました。皮質脊髄路は、脳と身体の間で運動や感覚の信号を伝える経路です。
経路全体を再構成する解析でも、左右の皮質脊髄路で密度の増加が確認されました。左大脳脚の密度が増した参加者ほど、解離症状の低下も大きい傾向がありました。振動なしのグループでは、症状の変化と白質の変化に関連は見られませんでした。
身体を使う介入の研究段階
胸骨への振動は、瞑想中に身体へ注意を戻すための感覚的な手がかりとして加えられました。研究では、呼吸に同期する振動と一定間隔の振動が使われました。
身体志向のトラウマ療法であるソマティック・エクスペリエンシングを扱った文献レビューでは、83件を確認し、16件を分析対象としました。レビューはPTSD関連症状への肯定的な効果を示す初期的な証拠を報告する一方、研究の質にはばらつきがあり、偏りの少ないランダム化比較試験がさらに必要だとしています。
今回の介入は、ソマティック・エクスペリエンシングの有効性を直接検証していませんが、身体感覚に注意を向ける方法を扱っています。
既存のPTSD治療との位置づけ
PTSDでは、トラウマに焦点を当てた心理療法と薬物療法が有効な治療法として位置づけられています。トラウマに焦点を当てた治療には、出来事の記憶や意味を扱う認知処理療法、持続エクスポージャー療法、EMDRなどがあります。
持続エクスポージャー療法は、トラウマの詳細を治療者と話し合うことや、避けてきた状況に段階的に向き合うことを含みます。PE療法の解説では、イメージ曝露と実生活内曝露を組み合わせる治療法とされ、PTSD治療の中でも有効性を示す証拠が豊富と評価されています。
胸骨への振動を加えた瞑想は、こうした治療と効果を直接比較した試験ではありません。











