
KRAS変異を狙うワクチンが免疫応答を誘導
膵管腺がんを対象とする治験ワクチン「カムペピムト」は、第2相試験で評価可能だった接種患者の98.9%に、変異KRASを認識するT細胞応答を誘導しました。ただし、試験全体では主要評価項目である無病生存期間の改善を示せず、再発を抑える効果は確認されていません。
KRASは細胞の増殖などに関わる遺伝子で、膵管腺がんの約90%に変異が見られます。カムペピムトは、膵がんでよく見られる7種類のKRAS変異を標的にし、リンパ節へ届いて免疫細胞が変異を認識するよう促す設計です。
T細胞は、異常のある細胞を認識して攻撃する免疫細胞です。評価可能な接種患者の82.2%では、変異KRASに対するT細胞応答が接種前の9.17倍を超えました。この応答の強さと無病生存期間との関連も報告されていますが、探索的分析に基づく結果です。
手術と化学療法後の144人を比較
第2相試験には、ステージI〜IIIのKRAS変異型膵管腺がん患者144人が参加しました。全員が手術と化学療法を受け、試験開始時の画像検査ではがんが確認されていませんでした。
研究チームは96人をワクチン接種群、48人を経過観察群に無作為に割り当てました。登録条件には、標準治療後6カ月以内に画像上の再発がないことが含まれます。
無病生存期間の中央値は接種群が23.8カ月、経過観察群が21.2カ月でした。群間の差は統計的に有意ではなく、試験の主要評価項目は達成されませんでした。そのため、免疫応答の誘導率だけからワクチンが再発を防ぐとは結論づけられません。
強い免疫応答と生存期間の関連
接種群のうち、T細胞応答が基準値の9.17倍を超えた患者では、無病生存期間の中央値に達していませんでした。一方、基準値を下回った患者の中央値は6.08カ月でした。これは患者を応答の強さで分けた分析であり、試験全体で確認された治療効果とは異なります。
試験では、開始時に血中の循環腫瘍DNA(ctDNA)が検出されなかった患者や、放射線治療歴のない患者で、無病生存期間の改善を示唆する結果も得られました。ctDNAは、がん細胞から血液中に放出されるDNAの断片です。これらの患者群での結果は、次の試験で検証するための手掛かりとして報告されています。
重い有害事象の発生率は接種群で10.4%、経過観察群で14.6%でした。第2相試験の結果を受け、追加接種を含む第3相試験が計画されています。全生存期間の結果はまだ得られておらず、再発や生存への影響は今後検証されます。
共通変異を狙う方式と個別化ワクチン
カムペピムトは、患者ごとに設計するのではなく、複数の患者に共通するKRAS変異を標的にした「既製型」のワクチンです。これに対し、個別化mRNAがんワクチンでは、患者の腫瘍サンプルを解析して変異などを調べ、抗原候補を選びます。選んだ抗原に合わせて患者ごとのワクチンを製造します。
この違いは、標的の選び方と製造方法にあります。カムペピムトはあらかじめ定めた7種類のKRAS変異を対象にする一方、個別化方式では腫瘍の情報に基づいて標的を決めます。個別化ワクチンの臨床成績は、この第2相試験で直接比較されていません。
次の第3相試験では、より大規模な試験でカムペピムトの免疫応答が患者の再発時期に影響するかを検証します。









