
細菌が死んだ後も続くDNA合成
オーフス大学の研究チームは、細菌が死んだ後も、細胞から放出された酵素がDNAを合成し続ける現象を示しました。合成するDNAの設計図を変えることで、バイオフィルムに新たな化学的性質を与えられる可能性があります。
実験では、細菌に感染するウイルス「バクテリオファージ」が、細菌の細胞内で休眠状態から活性化しました。栄養を断たれた2種の細菌、Shewanella oneidensisとBacillus subtilisでは、ウイルスの増殖によって一部の細胞が破裂し、DNAの材料と酵素が細胞外に放出されました。
研究チームは人工的に作った環状DNAを設計図として加え、酵素に繰り返し複製させました。新たにできたDNAは、Shewanella oneidensisでは花のような構造に、Bacillus subtilisでは長い鎖状にまとまりました。該当するウイルスを持たない細菌株では、このDNAは作られませんでした。
G4構造が持つ触媒作用
合成されたDNAの一種は、グアニン塩基に富むDNAが折り畳まれた「G-quadruplex(G4)」という構造をとります。G4は分子と結合し、特定の化学反応を速める触媒として働くことがあります。実験では、このDNAが触媒として反応を変え、バイオフィルムの電気的性質にも変化をもたらしました。
G4は、グアニン4個が平面状に集まった構造を重ねてできます。カリウムやナトリウムなどの陽イオンも構造の安定性に関わり、DNA鎖の向きや配列、周囲の条件によって形が変わります。G4を使ったDNA触媒では、過酸化反応を促す働きが代表例です。
ヘムという鉄を含む分子をG4に結合させると、過酸化酵素に似た触媒作用が生じます。G4の形が平行型か逆平行型かでヘムとの相互作用が変わり、カリウムイオンやナトリウムイオンの存在も構造に影響します。また、過酸化反応の速さは反応に使う還元剤の種類にも左右され、ヘムをG4に共有結合させると、逆平行型の触媒作用が高まる場合があります。
活性を左右する結合と反応条件
ヘムとG4をつなぐ方法によって、触媒活性も異なります。アミン結合で作った複合体のリンカー(DNAとヘムをつなぐ部分)は6原子、クリック反応で作ったものは30原子で、前者の触媒活性が高い結果でした。一方、クリック反応は合成収率が高く、特別な合成装置を必要としません。
ヘムとG4を組み合わせた触媒は、タンパク質の酵素である西洋ワサビペルオキシダーゼより幅広い基質に作用する一方、失活も速いと報告されています。失活は主に、反応に使う過酸化水素によるヘムの分解で起こります。
過酸化水素の濃度は、触媒反応と失活の速さの両方に関わります。還元基質は反応途中の活性中間体と速やかに反応し、失活を抑える作用を示しました。
応用に向けた実験段階
細菌のバイオフィルムは、DNAなどを含む粘着性の物質に包まれた細菌の集まりです。研究チームは、汚染物質の分解や排水処理、バイオエネルギー生産への応用を将来の可能性として挙げています。
実験は研究室内で2種の細菌を使い、研究者が用意したDNAを設計図として行われました。汚染水の浄化やバイオエネルギー生産の改善は実証されておらず、応用にはさらに研究が必要です。









