A pharmacist in a white coat showing a pill bottle to a woman
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うつ症状のある人を対象にした米国の大規模臨床試験では、遺伝子検査に基づくSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の処方は、3カ月時点で通常診療と比べて症状を改善しませんでした。一方、遺伝子情報に応じて薬や用量の変更が推奨された患者では、6カ月時点の寛解率が通常診療群より高くなりました。

1,460人を対象に処方方法を比較

試験には、米国の9つの医療システムで治療を受けた1,460人が参加しました。参加者は8歳以上で、3カ月以上うつを経験し、SSRIを始めるか調整する段階にありました。

参加者は遺伝子情報に基づく処方群と通常診療群に無作為に分けられました。全員のDNAについて、薬の代謝に関わるCYP2D6とCYP2C19を調べましたが、試験中に結果が医療者へ返されたのは遺伝子情報に基づく処方群だけでした。

遺伝子情報に基づく処方群では、医療者に薬の選択や用量の推奨が伝えられました。推奨は公開されている指針や薬のラベルに基づき、CYP2D6の働きを遅らせるほかの薬も考慮して作成されました。医療者が推奨に従う義務はありませんでした。

3カ月では症状の改善に差が出ず

主要な分析対象は、遺伝子検査の結果から薬や用量の変更が推奨された692人で、全参加者の約47%でした。成人と子どもの症状はPROMIS質問票で測定し、別の指標としてPHQ-8も使いました。

3カ月後には両群とも症状が小幅に改善しましたが、改善幅はほぼ同じでした。副作用にも両群で差はありませんでした。

処方は遺伝子情報に応じて変わりました。3カ月時点で遺伝子プロファイルに合う薬と用量を服用していた人は、遺伝子情報に基づく処方群で85%、通常診療群で74%でした。

6カ月の寛解率は遺伝子情報に基づく群で高く

6カ月時点でPROMISの基準による寛解に達した割合は、遺伝子情報に基づく処方群で48%、通常診療群で39%でした。PHQ-8を使った場合も、それぞれ30%と21%でした。

3カ月時点の症状改善が試験の主要評価項目で、6カ月時点の寛解率は副次評価項目でした。今回の結果では早期の症状改善は確認されず、後の時点で見られた差は別の評価項目で得られたものです。

遺伝子結果に応じた処方変更が推奨されても、3カ月後に遺伝子プロファイルに合う処方を受けていない患者がいました。著者らは、症状の差が後から現れた理由として、処方変更の時期が関係した可能性に触れています。

2種類の遺伝子だけでは反応の全体を捉えない

今回の試験が調べたCYP2D6とCYP2C19は、SSRIの代謝に関わる遺伝子です。Frontiers掲載のレビューでは、抗うつ薬の反応には薬物動態、つまり体内で薬がどう処理されるかに加え、薬力学、つまり薬が体にどう作用するかに関わる遺伝的な違いも関係すると整理されています。

レビューでは、セロトニン輸送体に関わるSLC6A4や、受容体に関わるHTR2Aの機能的な変異も、治療による改善や忍容性に影響しうるとされています。こうした影響は、環境ストレスとの相互作用の中で現れる場合もあるとまとめています。

レビューでは、CYP2C19やCYP2D6の代謝が遅い人は有効性が高まる一方、毒性のリスクも高くなり、代謝が速い人では治療反応が弱まる傾向が示されています。遺伝子情報は薬の血中濃度や副作用リスクに関わりますが、今回の試験が扱った2遺伝子だけでは、抗うつ薬への反応全体を説明できません。