
推定約18万頭、セーシェルの人口を上回る
セーシェルのアルダブラ環礁に生息するアルダブラゾウガメは、約18万頭と推定されました。調査期間中の推定値は約18万3000頭で、同国の人口を上回ります。19世紀に1000頭未満まで減少した個体群が、過去最大の規模に達したことを示す結果です。
調査を主導したセーシェル諸島財団(SIF)とエクセター大学は、2018〜2022年に財団職員が集めた5年分のカウントデータを分析しました。環礁全域を対象とした初の厳密な個体数推定であり、1990年代後半に広く引用された約10万頭という数字が更新されました。
ただし、新しい推定値は、1999年以降に個体数がほぼ倍増したことを意味しません。従来の調査では、低木や日陰に隠れて見つからなかった個体が数えられず、過去の推定値が実数を下回っていた可能性があります。研究チームは、見落としと生息環境ごとの見つけやすさの違いを統計モデルで補正しました。
長期的な保護と調査が個体群を支える
アルダブラは1981年に厳格な自然保護区となり、翌1982年にはユネスコの世界遺産に登録されました。SIFは1979年に設立され、アルダブラの管理と保全を担っています。
SIFは研究拠点や環礁内のキャンプを整備し、教育・普及プログラムも設けてきました。アルダブラでは長期的なモニタリングと研究が続いており、今回の推定には現地で働く財団職員が毎年集めた調査データが使われています。
これまでの管理では、植生を損なっていた野生化したヤギの抑制や、外来種の管理が行われてきました。ユネスコの評価報告によると、SIFは生物多様性と生態系の過程を保ち、モニタリングや研究、人数を制限した教育目的の訪問を続けてきました。ヤギは2012年に駆除されましたが、野生化したネコやクマネズミは今もゾウガメの卵や幼体を捕食しています。
見落としを補正し、今後の比較基準を確立
植生が密な場所では、地上からゾウガメを数えるのが難しくなります。今回の研究では、観察できた個体だけでなく、見えなかった個体もモデルで推定しました。この方法では、環礁の生息環境ごとの見つけやすさの違いも考慮しています。
調査では、ゾウガメの密度が最も高かったのは「トータス・ターフ」と呼ばれる草地でした。次に密度が高かったのは、開けた露出地と低木がまばらに生える場所です。密生した低木林やマングローブでは個体を見つけにくく、統計モデルでその差を補正しました。
今回の推定は、今後の個体数の変化を追うための基準値になります。調査に参加した研究者らは、この数字を回復の終点ではなく、気候変動や干ばつ、外来種の影響を早期に捉えるための出発点と位置づけています。
採食は草地や植物の広がりにも関わる
ゾウガメの採食は、環礁の植生に直接関わります。個体数調査で密度が最も高かったトータス・ターフは、ゾウガメが草を食べ続ける場所です。採食によって、植物が短く刈り込まれた草地が保たれます。
ゾウガメは糞を通じて土壌に養分を戻し、種子を離れた場所へ運びます。採食、排せつ、移動は、植物の生育や種子の散布に関わる生態系の働きです。
個体群の維持には脅威も残ります。研究者らは、長期化・頻発化する干ばつによって日陰や餌が減る可能性と、海面上昇が環礁の低地を脅かすことを指摘しています。野生化したネコやクマネズミによる卵・幼体への捕食も続いています。









