
1億1500万年前の骨から見つかった微細構造
ブラジルで見つかった約1億1500万年前の小型獣脚類「アラタサウルス・ムゼウナシオナリ」の脚の骨から、赤血球に似た構造と、血液に関係する化学物質の痕跡が報告されました。研究チームは、ヘム由来の分子と構造の位置や形を組み合わせ、恐竜の血液細胞が鉱物化した可能性を示しています。
微細構造は、骨の中でかつて血管が通っていた管の内部に見つかりました。ヘムは赤血球中のヘモグロビンに含まれ、酸素の運搬に関わる鉄を含む分子です。
研究チームは骨の内部の化学成分を調べ、顕微鏡像と分子の情報を同じ場所に結び付けました。分子を骨から取り出して調べる方法と異なり、化学的な痕跡がどの微細構造に伴うかを検討できます。
化石化の環境とヘムの痕跡
研究チームは、死後の遺骸が浅い水域の低酸素環境に沈み、微生物の膜に覆われたことが保存に関係したと考えています。骨の微細構造はマンガン酸化鉱物と関連しており、初期の鉱物化が構造の安定化や複製に寄与した可能性があります。
別の研究では、ドイツのメッセルで見つかった約4800万年前の脊椎動物化石からポルフィリンが検出されました。研究者らは、その信号を化石由来の変化したヘムとみるのが最も妥当としましたが、微生物由来の可能性を完全には排除していません。
研究者らは化石と周囲の堆積物を複数の分析法で調べ、黄鉄鉱や粘土鉱物、化石を覆う炭酸塩・リン酸カルシウム主体の層も確認しました。こうした化学的・鉱物学的な環境の組み合わせが、有機分子の保存に関係した可能性があります。
化学分析で過去の報告と区別する試み
恐竜の軟組織や血液細胞に似た構造は過去にも報告されてきましたが、汚染や鉱物の類似形状を除外することが課題でした。今回の研究では、骨中のヘム関連物質に加え、周囲の微生物膜に多いクロロフィル由来物質との比率も比較され、骨ではヘム関連分子が優勢でした。
ノースカロライナ州立大学の研究者らは2025年、ティラノサウルスとブラキロフォサウルスの骨試料を共鳴ラマン法で分析し、ヘムがグロビンタンパク質に結合した状態などを調べました。この手法では、対象分子に合わせた光を使って分子結合と構造を捉えます。
この分析では、ヘモグロビンが分解する過程で、ヘムの鉄にゲータイトが形成される可能性も示されました。アラタサウルスの試料では、血管の通り道にある形状とヘム関連分子が結び付けられています。一方、2025年の研究では、既報の恐竜試料でヘムとタンパク質の結合が調べられました。
赤血球とする解釈には異論
ノースカロライナ州立大学のメアリー・シュバイツァー氏は、今回の構造には鳥類や爬虫類の赤血球に見られる核の膨らみがなく、形も凹型に見えるとして、赤血球とする解釈に同意していません。エヴァン・サイッタ氏もヘムの存在は認める一方、円盤状の構造が血球なのかマンガン酸化物なのかに疑問を示しました。
メアリー・マクナマラ氏は、化学物質が別の由来ではないことをさらに確かめる試験が必要だと述べ、化石化の過程を実験室で再現できれば確証につながると指摘しました。研究を率いたクリティ・グライス氏は、骨の構造、位置、化学的特徴を根拠に、鉱物化した赤血球だとの見方を保っています。
グライス氏は、今後の課題として、異なる地質環境や恐竜の系統に属する化石を調べ、同様の信号を独立に確認することを挙げました。








