Vladimir Putin with Mikhail Kasyanov-1
写真: Presidential Press and Information Office / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons

ロシアの元首相ミハイル・カシヤノフ氏は、プーチン大統領はウクライナ侵攻が誤りだったと気づいているものの、方針を変えず、交渉に応じる準備もないとの見方を示しました。原油収入の変動、防空ミサイルの供給制約、戦争支持を測る調査の限界も、戦争をめぐる状況に関わっています。

カシヤノフ氏が指摘するプーチン氏の判断

2000~2004年にロシア首相を務めたカシヤノフ氏は、2022年に始まった侵攻について、プーチン氏は誤りだったと気づいているものの、自らの決定を曲げられないと述べました。治安機関がウクライナを脆弱だと報告し、プーチン氏はそれを信じたのだろうとも語っています。

カシヤノフ氏は、ロシア経済が低迷し、国民やエリート層の不安が高まっても、プーチン氏が戦争終結の交渉に応じるとは見ていません。来年中に戦争が終わるとも考えておらず、米イラン対立に伴う原油高や、ロシアへの対応をめぐる米欧の意見の違いがプーチン氏を勢いづかせていると指摘しました。

同氏は、これからの冬がウクライナにとって特に厳しくなる可能性を警告し、西側諸国に結束とパトリオット防空システムの迅速な供給を求めました。ロシアによる民間インフラへの攻撃が強まっているとして、供給要請はその被害を防ぐための措置だと説明しています。

原油収入は予算を支えるが、価格だけでは決まらない

ユーラシア研究所の分析によると、2025年1~4月のロシア連邦政府の歳入に占める石油・ガス収入の割合は30.4%でした。同年4月の石油・ガス収入は前年同月比で17.3%減り、同期間の財政支出は前年同期比20.8%増加しました。

ロシア政府の2025年補正予算案は、年間の財政赤字を約3兆8000億ルーブル、国内総生産(GDP)比1.7%と見込みました。赤字の補填には国民福祉基金の資金を使う計画で、基金の流動資産から4470億ルーブルを支出する予定でした。

同研究所によると、基準となる原油価格(切断価格)を上回る石油・ガス収入の増加分は基金に繰り入れられます。原油価格が基準を下回ると繰り入れは見込めず、赤字補填とともに基金の流動資産を減らす要因になります。一方、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの2026年7月の分析によると、連邦歳入の3割前後を占める石油・ガス収入は2カ月続けて前年水準を上回りましたが、歳入増への寄与は付加価値税収などより小さかったとしています。

同分析によれば、石油・ガス収入の中心となる採掘税は、生産量が増えなければ税収も伸びにくい仕組みです。ロシアの資源企業は原油や石油を増産できず、2026年5月の鉱業生産指数は前年同月比0.8%減でした。原油高がそのまま戦費を押し上げるとは限らず、収入は生産や税制にも左右されます。

パトリオット供給には迎撃能力と在庫の制約

パトリオットは、地対空ミサイルで航空機や巡航ミサイル、弾道ミサイルなどに対処する防空システムです。ウクライナ・ウォー・アナリティクスは、弾道ミサイルの迎撃にはPAC-3 MSEを、巡航ミサイルなどにはPAC-2 GEM-Tを挙げ、型によって対応する脅威が異なると説明しています。

同分析によると、PAC-3 MSEは飛来する目標に直接衝突させる方式で、PAC-2 GEM-Tは破片で目標を破壊する方式です。PAC-3 MSEは1発400万ドル超とされ、生産にも限りがあるため、ウクライナでは迎撃用弾薬の供給が制約となっています。また、ドローンなどには短距離の防空手段を使い、高価な迎撃ミサイルを弾道・極超音速ミサイル向けに温存する運用が記されています。

ウクライナ国防省の2026年7月の集計によると、ロシアが発射した弾道ミサイル195発のうち、迎撃したのは29発でした。同月の攻撃では、ドローンなどを含む計5358発を迎撃した一方、PAC-3迎撃ミサイルの深刻な不足が報告されました。

同集計によると、巡航ミサイル265発のうち187発を迎撃しました。同月には、電子戦や迎撃ドローンなどによって戦術級ドローン4万8000機超を無力化したとの数字も挙げられました。防空手段は脅威の種類によって異なり、カシヤノフ氏が求めたパトリオットの供給は、特に弾道ミサイルへの備えに関わります。

戦争支持の数字は質問方法や対象で変わる

ケンブリッジ大学出版局の政治学研究は、ロシアの戦争支持に関する調査を分析し、直接質問とリスト実験の回答差が、そのまま隠れた反対を意味するとは限らないと指摘しました。リスト実験は複数の項目への賛同数を尋ねる方法で、回答者が比較対象との関係で賛成を控える「閾値効果」が起こり得るとしています。

研究者らは、侵攻から約1年後の調査で、意見を偽っていた回答者は5~7%程度だった一方、約15%には質問の枠組みで揺れやすい弱い支持が見られたと推定しました。後の調査でも、弱い支持を持つ人は同程度いたとしています。

同研究が紹介したレバダ・センターの月次調査では、軍事行動への支持は2022年2月の68%から翌月の80%までの範囲でした。研究者ら自身の推定は、2022年5月中旬の70%から2023年1月初旬の59%でした。

2026年8月のレバダ・センター調査では、プーチン氏を承認する人が76%、ロシアの軍事行動を支持する人が68%で、同じ調査では59%が交渉を支持しました。軍事行動への支持と交渉支持は両立し得るため、交渉を望む回答だけでは侵攻への反対とは言えません。

国連財団の調査では、ロシアの回答者の62%が、各国は国益を優先するより協力して問題を解決すべきだと答えました。この調査はロシアでオンライン方式を用いた非確率標本で、全国民を代表する結果とは扱えないと説明されています。また、国際協力についての一般的な質問は、ウクライナ侵攻やロシア軍の撤退への賛否を直接尋ねたものではありません。