1991年に始まった異世界ファンタジー

ひかわきょうこさんの漫画『彼方から』が、2026年にテレビアニメ化されます。少女雑誌「LaLa」での連載開始から35年を記念した企画で、原作者の監修のもと制作されています。異世界へ飛ばされた少女が現地の言葉を学ぶ物語で、言葉が通じることを前提にしがちな近年の異世界作品とは異なる出発点を持ちます。

『彼方から』は1991年から2002年まで連載され、全5部で構成されました。公式サイトによると、累計発行部数は400万部で、2004年には優秀なSF作品に贈られる星雲賞を受賞しています。作品の軸には、主人公ノリコと、彼女を助けたイザークの旅があります。

ノリコは、夢で見ていた森にたどり着いた後、「花虫」と呼ばれる怪物に襲われ、イザークに救われます。イザークは、破壊をもたらす「天上鬼」を目覚めさせる存在「目覚め」を探しており、権力者たちもその力を得ようとしています。ノリコはイザークたちの言葉を理解できない状態から、現地の人々に教わりながら言語を身につけていきます。

言葉を学ぶ過程が旅に組み込まれる

アニメ!アニメ!は、第1話でノリコとイザークの視点を切り替え、意思疎通の難しさを画面の歪みで表現したと紹介しています。2人は言葉が通じないまま旅を始め、ノリコはイザークや出会った人々に教わって言語を学びます。意思が少しずつ伝わる過程は、人との関係を築く展開にもつながっています。

言語が通じない異世界を扱う近年の例に、Fafs F. Sashimiさんの小説『異世界転生したけど日本語が通じなかった』があります。主人公の翠も現地の言葉が分からず、言語学や語学の知識を使って学んでいきます。物語は言語の習得と並行して、戦争中の世界を知識で渡り歩く筋立てです。

両作は、異世界で言葉が通じないことを物語の条件とし、主人公が言語を学ぶ点で共通しています。『彼方から』ではノリコが現地の人から教わり、旅の中で意思疎通を深めます。小説の紹介文では、翠が言語学の知識を活用する設定が示されており、言語習得が物語を進める方法として前面に出ています。どちらも、異世界の言葉を最初から理解できる設定とは異なる描写です。

配信と海外市場をめぐる環境

アニメ!アニメ!は、電子書籍やサブスクリプション、動画配信の普及で過去作品に触れやすくなり、過去作のアニメ化や再アニメ化も相次いでいると述べています。同媒体は『天は赤い河のほとり』『3年奇面組』『うる星やつら』を、近年アニメ化または再アニメ化された作品として挙げました。『彼方から』のアニメ化も、過去の漫画を現在の視聴者へ届ける動きの一例です。

CREX経済データプラットフォームの集計では、日本アニメの国内外を合わせた産業市場は2024年に3兆8,407億円となり、海外売上は2兆1,702億円でした。海外売上は市場全体の56.5%を占め、国内売上の1兆6,705億円を上回っています。配信市場は2,655億円に達し、テレビ・映画・ビデオの合計を上回りました。

動画配信の普及と海外市場の拡大は、旧作を新たな視聴者に届ける環境の変化を示しています。アニメ!アニメ!は、過去作品が現代の空気に合い、海外のファンにも受け入れられるとの判断が背景にあるのではないかと見ています。

出版社が進めるIP展開との違い

出版・メディア事業を手がけるオーバーラップホールディングスは、マンガやライトノベルなどのIPをアニメ化し、他メディアへ展開する方針を掲げています。同社はアニメ化によるIP当たりの売上増を見込み、アニメ化作品数の増加やシリーズ化、ゲーム化も成長戦略に挙げました。これは、作品を複数の媒体で展開する現在の事業戦略の一例です。

同社はさらに、海外ライセンスの拡大や、将来的な海外向け直接出版の可能性も示しています。こうした動きは、配信や海外販売を含む市場の拡大と並行して、出版社がIPを育てて届ける方法を広げていることを示します。

『彼方から』では、ノリコがスマートフォンを持つ描写もあり、アニメ!アニメ!は連載当時と現在の隔たりをつなぐ要素として取り上げています。物語の出発点である言葉の通じなさと、現代の道具を持つ主人公が同じ作品に置かれています。