
植物の細胞段階で候補を選別
植物の新品種開発では、望ましい性質を持つ個体を見つけるために多数の植物を育てて調べる選抜が必要で、時間と手間がかかります。農業技術企業Amateraは、植物体に育てる前の細胞段階で候補を選び、有望な細胞だけを再生させる仕組みを開発しています。
同社の方式では、植物細胞を一つずつ分けて培養し、細胞株ごとに調べます。従来は細胞から植物体を再生してから遺伝子型などを確認していましたが、この方式では細胞を先に選別し、候補を絞ってから植物体にします。
育種には、交配による従来育種と、遺伝子編集などのバイオテクノロジーがあります。どちらも目的の遺伝的特徴を持つ個体を見つけるため、多くの候補を調べる必要があります。Amateraは選抜を細胞段階へ移し、候補でない個体を育てる工程を減らす構想です。
コーヒーとブドウで進む品種開発
開発対象には、カフェインを自然に含まないコーヒー、アラビカ種に近い品質を目指す「Robustica」、べと病やうどんこ病に強いワイン用ブドウがあります。Robusticaはロブスタ種を基に、気候への耐性とアラビカ種に近いカップ品質を目指して開発されています。
細胞段階で選抜できる性質には条件があります。カフェインのように細胞の代謝から調べられる特徴は選抜対象になります。一方、干ばつ耐性や収量については、細胞段階で候補を特定する方法が確立していないと、Amateraの共同創業者オマール・デッキシ氏は述べています。
コーヒーでは、品質に関わる新たな遺伝子を特定し、現在はその働きを検証しています。カフェインを含まない品種についても、開発したい品種に適した遺伝子を見つけています。
細胞から植物体へ戻す工程
細胞を選んだ後は、植物体へ再生させる工程が必要です。Amateraによると、単一細胞の培養には細胞生物学の専門知識が必要です。また、細胞を一つずつ扱うため、自動化とロボット技術も組み合わせています。
小麦の遺伝子導入と再生に関するレビューでは、再生能力が品種の遺伝子型に強く左右され、一部の主要品種では能力が低いことが課題として挙げられています。植物の再生では、オーキシンとサイトカイニンという植物ホルモンのバランスや分布が、根と芽の形成に関わります。
このレビューでは、BBM/WUSやGRF4-GIF1など、再生を促す遺伝子群の研究も扱われています。細胞段階で候補を絞る選抜と、選んだ細胞を再生させる工程は別々です。作物や品種による再生能力の差は、候補を個体にする際の技術課題になります。
圃場評価と病害への対応
多年生作物の育種では、品種の開発から圃場での評価まで長い期間がかかります。コーヒーの品種改良には平均で約20年、場合によってはそれ以上かかると、Revista Cultivarは2020年に報じました。
2021年にRevista Cultivarが紹介したコーヒー品種の実証事業では、試験は2016年に始まり、ミナスジェライス州セラード地域の25農場と12自治体で実施されていました。事業は2021年に第3回収穫を迎え、第4回収穫後の2022年に追加品種を推奨リストへ加える可能性が示されていました。
ブドウでは、べと病とうどんこ病が品種開発の対象です。CropLife Internationalの2011年のケーススタディによると、当時、欧州のワイン用ブドウ園では全栽培面積に殺菌剤が使われ、シーズン中の散布は通常12〜15回でした。
病害抵抗性の品種でも、病原菌の集団が適応し、抵抗性を乗り越える可能性があります。EUのGrapeBreed4IPMプロジェクトは抵抗性の長期維持を課題に挙げています。栽培者向けの教材では、抵抗性品種に加え、生物的防除、散布方法の改善、病害の監視などを組み合わせる考え方を扱っています。










