生分解性ポリエステルを分解し、ペニシリンも切断する細菌酵素を発見
出典: campus.uni-konstanz.de

コンスタンツ大学の研究チームが、特定の生分解性プラスチックを分解する細菌の酵素を見つけました。この酵素はペニシリンも切断しますが、実験で反応が確認されたことと、生きた細菌に抗生物質耐性を与えることは区別されます。

森林土壌で生分解性プラスチックを調査

研究チームは、長鎖脂肪族ポリエステル(LCAP)という生分解性プラスチックを使い、土壌中で微生物が分解する過程と、関与する微生物や遺伝子を調べました。LCAPは、コンスタンツ大学のステファン・メッキング氏の研究チームが開発した材料です。

研究者はLCAPのフィルムを植物園の森林土壌の腐植層に埋めました。別の実験では、同じ土壌に粉末状の材料を混ぜ、二酸化炭素の発生量などから微生物の活動を1年間追いました。

実験では、LCAPのほか、PHBVやPCLなどの生分解性プラスチックが約250〜330日で完全に分解しました。セルロースは約80日で分解しましたが、高密度ポリエチレン(HDPE)はほとんど分解しませんでした。

分解しやすさを分けるポリマーの結合

LCAPは、長い鎖状の分子をエステル結合でつないだポリエステルです。こうした結合は加水分解を受けるため、酵素がポリマー鎖を切り、微生物が取り込める単量体や短い分子に分解できます。

PHBVなどのポリヒドロキシアルカノエート(PHA)も、微生物が作る生分解性ポリマーです。PHA分解酵素はポリマー中のエステル結合を加水分解し、単量体や短い分子を生じさせます。

一方、HDPEはポリエチレン系のプラスチックで、LCAPのようなエステル結合を主鎖に持ちません。微生物による分解のしやすさは、ポリマーに酵素が切断できる結合があるかどうかに左右されます。PHAの分解効率には、ポリマーの組成や結晶性、環境条件も関係します。

細菌の表面で働く「パックマン酵素」

森林土壌から回収したLCAPフィルムには、細菌1個分ほどの大きさと形をした穴が多数見つかりました。研究チームは、細菌の表面に結び付いた酵素が材料を分解しながら、細菌が内部へ入り込んだ可能性を考えました。

研究チームはLCAPを含む土壌で増えた遺伝子を調べ、エステラーゼを作る遺伝子を特定しました。この酵素には、細胞外へ運ぶためのシグナルと、細胞膜につなぎ留める脂質アンカーがあります。そのため細菌の表面にとどまり、近くのプラスチックを分解します。

酵素の活性部位は大きく開いた構造で、ポリマー鎖のような大きな分子が結合できます。研究チームはこの形状と働きから「パックマン酵素」と名付けました。実験では、ポリエステルを構成する単量体への分解と、ペニシリンを切断する反応の両方が確認されました。

ペニシリン分解と耐性、分解環境の違い

ペニシリンは細菌の細胞壁形成に関わるタンパク質に結合し、細胞壁の合成を妨げます。βラクタム系の抗生物質は、βラクタム環が壊されると働きを失います。

βラクタマーゼはその環を切断して抗生物質を不活性化し、細菌を守ることがあります。今回の酵素にもペニシリンを切断する作用がありましたが、試験管内での化学反応だけでは、この酵素によって生きた細菌が耐性を得ることまでは示されません。

今回の分解実験は森林土壌で行われましたが、生分解性プラスチックの分解条件は材料と環境によって異なります。産業用コンポストの基準では、高温と酸素、微生物がある環境で、6カ月以内に少なくとも90%の生分解が求められます。

コンポスト可能なプラスチックでも、家庭用コンポストや自然環境で同じように分解するとは限りません。産業用コンポスト向けの材料は、指定された処理環境に合わせて扱う必要があります。生分解性プラスチックの分解を測る際には、酸素消費量や発生する二酸化炭素などが指標として使われます。また、堆肥化条件での分解と、プラスチックが細片になる物理的な崩壊は区別されます。