rat, mouse, laboratory, research, rodent, rat, rat, rat, rat, rat, mouse, mouse, mouse, laboratory, laboratory, laboratory

テストステロンの投与時期を比較

雄ラットを使った実験で、テストステロンが海馬の新生ニューロンの生存を高める効果は、細胞が生まれてからの発達段階によって異なることが示されました。特に、空間学習や記憶に関わる海馬の背側では、生後16〜30日の投与で生存細胞が増えました。

成体の脳で新しい神経細胞が生まれ、機能するニューロンへ育つ過程を「神経新生」といいます。海馬では、新しく生まれた細胞の約半数が最初の1カ月で自然に失われるとされ、今回の実験では、その生存にテストステロンの投与時期が関係するかを調べました。

研究チームは、細胞が生まれた後の30日間すべてに投与する条件と、前半の1〜15日または後半の16〜30日だけ投与する条件を比べました。これにより、投与期間の長さと細胞の発達時期のどちらが生存に関わるかを検討しました。

43匹の雄ラットで細胞の生存を測定

実験には、開始時に約60日齢だった雄のラット43匹を使いました。全個体の精巣を摘出して体内のテストステロン源を取り除いたうえで、細胞分裂時にDNAへ取り込まれるBrdUを注射し、その後に生まれた細胞を標識しました。

ラットは投与期間ごとに、テストステロンまたは比較対照のゴマ油を毎日注射するグループに分けられました。テストステロンは1匹当たり0.500ミリグラム投与し、投与開始から30日後に脳を調べて、標識細胞がどれだけ残っているかを数えました。

標識された細胞の一部に、成熟したニューロンに見られるNeuNというタンパク質があるかも調べました。生き残った標識細胞の約79〜87%がNeuN陽性で、その割合は投与条件によって変わりませんでした。細胞数の増加は、ニューロンへ成熟する割合の変化ではなく、生存する新生ニューロンの数の増加として解釈されました。

背側海馬では後半の投与でも増加

歯状回全体で見ると、テストステロンを30日間投与したグループでは、ゴマ油を投与したグループより生存細胞が有意に多くなりました。16〜30日の投与では増加傾向が見られましたが、全体の比較では統計的有意差に届かず、1〜15日の投与では効果が見られませんでした。

背側の歯状回に絞ると、30日間の投与に加え、16〜30日の投与でも生存細胞が増えました。一方、ストレスや不安の調節に関わる腹側の歯状回では、どの投与期間でもテストステロンによる増加は確認されませんでした。

この結果は、成熟途中のニューロンが、細胞が生まれてから2〜4週ごろにテストステロンの影響を受けやすい可能性を示しています。研究を率いたMark D. Spritzer氏は、投与期間が長いほど神経新生への効果が大きくなる可能性を指摘しました。

人への応用はまだ別の検証が必要

新生ニューロンは、細胞が生まれてから11〜30日の間に、ほかの脳領域とのシナプス(神経細胞どうしの接続)を形成し始めます。この時期には、神経伝達物質GABAの信号が細胞を興奮させる状態から抑制する状態へ移る変化も起こり、今回観察された発達段階との関連が示されています。

テストステロンが細胞死を抑える、脳由来神経栄養因子などの成長を支えるタンパク質を増やす、あるいはGABAの変化を助ける可能性も挙げられています。これらは作用機序の候補であり、実験で確定した仕組みではありません。

今回の実験は、若い雄ラットを外科的に去勢し、個別飼育した条件で行われました。研究者は、こうした条件が日常生活を送る高齢男性の緩やかなホルモン低下とは異なる点を挙げ、ラットで得られた結果を人へ直接当てはめることはできないとしています。