
2年間の試験で認知機能や脳容積に差は出ず
魚をあまり食べず、認知症のリスク要因を持つ55〜80歳の成人を対象にした臨床試験で、1日2,000mgのDHAを補うと髄液中のDHA関連指標は上昇しました。一方、2年間の認知機能検査や脳画像では、偽薬を受けたグループとの違いは確認されませんでした。
DHAは、脳の神経細胞の膜を構成するオメガ3脂肪酸の一種です。試験では365人をDHA群と偽薬群に無作為に割り当て、参加者と研究者の双方に割り当てを知らせない二重盲検法で比較しました。
参加者の47%は、アルツハイマー病のリスク上昇と関連するAPOE ε4という遺伝子型を持っていました。DHAを補ったグループでは6カ月後に髄液中のDHAとアラキドン酸の比率が上がりましたが、24カ月後の認知機能や脳容積には群間差がありませんでした。
髄液中の上昇が示すこと
髄液は脳や脊髄の周囲を満たす液体で、その成分を調べると中枢神経系に届いた物質の変化を捉えられます。今回の試験では、髄液中の指標が上昇した一方で、認知機能や脳構造の変化には差が見られませんでした。
2020年に報告された別の試験では、認知機能に問題のない33人に1日2,152mgのDHAまたは偽薬を6カ月間投与しました。DHA群では髄液中のDHAが偽薬群より28%、EPAが43%増えましたが、脳容積や認知機能の変化には群間差がありませんでした。
この先行試験では、腰椎穿刺とMRIの両方を完了した人は26人、認知機能評価を完了した人は29人でした。髄液の数値上昇はDHAが中枢神経系に届いたことを示す指標ですが、今回と先行試験の結果は、その上昇だけでは認知機能や脳容積の改善を示さないことも示しています。
結果が対象とする人
今回の参加者は、食事からのDHA摂取が少なく、認知症のリスク要因を少なくとも1つ持つ55〜80歳の成人でした。試験の結果は、こうした条件の参加者に1日2,000mgのDHAを補った場合に得られたものです。
魚を日常的に食べる人や、認知症のリスク要因が少ない人は、今回の試験で設定された参加者の条件とは異なります。そのため、試験結果をそれらの人にそのまま当てはめた結論にはなりません。
APOE ε4の有無によって髄液中のDHA関連指標の変化に差はありませんでした。試験では、脳容積と認知機能についても、DHA群と偽薬群の間に違いは見られませんでした。
食事と今後の研究
研究チームは、DHAを単独のサプリメントとして摂る場合と、魚や野菜、果物、全粒穀物などを含む食事から摂る場合とで、脳への作用が異なる可能性を調べています。地中海式の食事パターンは、魚や植物性食品などを組み合わせる食べ方として研究チームが挙げています。
ただし、今回の臨床試験が直接比較したのはDHAサプリメントと偽薬です。食事の内容や運動、睡眠を変えることで認知機能や脳容積がどう変化するかは、この試験の比較対象ではありません。
研究チームは、脳がオメガ3脂肪酸をどのように取り込み、処理して利用するかを調べています。高用量のDHAで髄液中の指標が上昇しても認知機能や脳構造に差が出なかった結果を踏まえ、今後は脳内でのDHA代謝に焦点を置く方針です。











