
マッコウクジラのクリック列を調べるAI研究では、8〜10回のクリック列を手掛かりに採餌潜水を予測します。クリックの並びと行動の結び付きは、クジラの音声に行動情報が含まれる可能性を調べる手掛かりになります。ただし、行動を予測できることと、クジラが行動について意味を伝えていることは別の問いです。
クリック列と潜水の関係
マッコウクジラは、複数のクリックを連ねた「コーダ」と呼ばれる音声を使います。コーダは、個体間の社会的なやり取りや、長く深い採餌潜水の前後に交わされます。
AIを使い、コーダの列から次のクリックを予測する試みでは、データセット内で次のクリックを当てる精度が99%に達しました。Project CETIの研究者らは、ドミニカ沖で記録された数万件のクリックと、行動などの注釈情報を分析に使っています。
採餌潜水の予測では、8〜10回のクリック列が手掛かりになります。これは音声の並びと、その後の行動との対応を調べる試みです。クリック列から潜水を予測できても、それだけでクジラが「潜る」と伝えたことにはなりません。
コーダを形作る音の要素
コーダは一般に、3〜40回のクリックからなる、2秒未満の音声パターンです。クリックの数や間隔によって型が分かれ、個体はコーダを単独で発するだけでなく、複数の個体とのやり取りの中で交わします。
研究では、コーダのリズムとテンポに加え、前後のコーダに応じてクリック間隔を変える「ルバート」と、末尾にクリックを加える「装飾」が報告されました。これらを組み合わせると、従来考えられていたより多くのコーダを識別できます。
研究者らは、東カリブ海のデータセットに含まれる8,719件のコーダを分析し、既知の21種類を土台に音声の変化を調べました。音の変化は会話の文脈に応じて系統的に使われていると報告しています。
行動との対応が示すこと
2008年の研究では、15頭のオスを7年間観察し、67回の遭遇で記録されたコーダを分析しました。分類された490件は8つのファミリーと25種類に分けられ、コーダの型と潜水サイクルの段階は行動の状況と関連していました。
「Three plus」ファミリーのコーダは、採餌潜水のサイクルで潜降中または浮上中の個体に多く見られました。一方、「Regular」と「Progressive」は個体間の相互作用でほぼ使われ、「Root」は主に水面での変化した潜水サイクルに限られていました。
行動との対応は、その音が行動について意味のある情報を伝えているかを検討する材料になりますが、意味の解読そのものとは区別されます。
行動予測と「意味」の違い
研究では、コーダの組み合わせによって多様な音声を作れることが示されました。一方、研究者らは、コーダの多くが何を伝えるのかは未解明だとしています。音声が複雑な構造を持つことと、個々の音声の意味が分かることは同じではありません。
太平洋の23地点で集められた23,429件のコーダを調べた研究では、クリックの型の使い方から7つのクラン(文化的な集団)が分類されました。一部の「アイデンティティ・コーダ」は、集団の識別に関わる象徴的な標識として機能する可能性が示されています。
研究者らは、採餌や子育て、集団の防衛などの調整にコーダを使っている可能性を挙げています。これは研究者らの見立てです。










