Bluetooth HDT、最大7.5MbpsのLE向け新機能 対応製品は2027年に登場見込み
出典: bluetooth.com

Bluetooth SIGは、Bluetooth LEの最大PHYビットレートを2Mbpsから7.5Mbpsに高める「Bluetooth High Data Throughput(HDT)」を発表しました。HDTは高音質音声を支える通信基盤ですが、Bluetooth Core 7.0の任意機能です。既存のイヤホンやスマートフォンは、ソフトウェア更新だけでは対応できません。対応する音響製品は2027年に登場する可能性があります。

HDTが変えるのは無線通信の速度

PHY(物理層)は、無線信号の送受信を担う仕組みです。HDTはBluetooth LEに新しいPHYを加え、最大ビットレートを従来の2Mbpsから7.5Mbpsへ引き上げます。Bluetooth LEに最大2MbpsのPHYが導入されたのは2016年で、HDTはそれ以来の拡張です。

HDTはBluetooth LEと別の無線規格ではなく、その仕組みを拡張します。接続は従来のPHYで確立し、対応機器同士で必要に応じてHDTへ切り替えられます。既存のBluetooth LE機器との互換性を保ち、HDT対応機器は従来方式へ戻ることもできます。

速度向上には、同じチャネル帯域幅とチャネル間隔を使いながら、より多くのデータを運べる変調方式と誤り訂正を採り入れます。通信時間が短くなれば、送受信機の動作時間も短くなり、消費電力を抑えられる可能性があります。HDTには、通信の信頼性や干渉への耐性を高める仕組みも含まれます。

高音質音声を支える仕組み

HDTは音声データを圧縮・展開するコーデックではなく、無線区間のデータ伝送を担うPHYの拡張です。コーデックは音声を送信側で符号化し、受信側で復号する方式で、Bluetooth LE AudioではLC3が利用できます。HDTとLC3は役割の異なる層にあり、HDTによる通信速度の向上は、より多くの音声データを送る余地を広げます。

Bluetooth SIGは、HDTが高解像度・ロスレス音声など、より多くのデータを必要とする用途を支えるとしています。また、Bluetooth SIGはHDTのPHYの最大ビットレートを7.5Mbpsとし、データ転送時間の短縮や、既存の用途を超える負荷への対応を挙げています。ただし、ビットレートの上限だけで実際の音質が決まるわけではなく、コーデックや対応機器も関わります。

非圧縮音声のデータ量を比べると、CD相当の44.1kHz・16bit・ステレオは毎秒約1.411Mbps、24bit・96kHz・ステレオは約4.608Mbpsです。どちらも音声データ自体のビットレートです。後者は従来の2Mbpsを超えますが、HDTの最大7.5Mbpsを下回ります。これはPHYの上限との比較で、実際の無線伝送では通信に必要なデータも加わります。

既存コーデックとの違いと対応条件

現在もaptX LosslessやLDACなどを使った高音質伝送があります。aptX Losslessのビットレートは最大1.2Mbps、LDACは最大990kbpsです。どちらも対応する送信機器とイヤホンなどが必要です。Bluetooth SIGは、個別方式に限らずBluetoothの標準仕様に高いデータ伝送能力を加えることを目指しています。

LDACは、音声データを非可逆圧縮してBluetoothで送る方式です。ソニーはLDACについて、従来方式の約3倍のデータ量を伝送でき、電波状況に応じて伝送品質やスループットを調整すると説明しています。HDTはコーデックではなくPHYの拡張であり、LDACなどとは異なる種類の技術です。

HDTはBluetooth Core 7.0の任意機能で、採用には対応するハードウェアが必要です。Bluetooth SIGは対応製品が2027年に登場すると見込んでおり、QualcommのFastConnect 8800はBluetooth 7とHDTへの対応を掲げています。Appleは採用を公表していません。一方、Bluetooth SIGの幹部はApple側との協議に言及し、関心が高いとの見方を示しました。

音声以外の用途にも広がる可能性

HDTはイヤホンやヘッドホン以外にも、ウェアラブル端末、スマートグラス、スマートホーム機器での利用が想定されています。より多くのデータを短時間で送れる特性は、音声以外のBluetooth機器にも活用される可能性があります。

Bluetooth LE Audioは、通話やメディア再生を含むBluetoothの音声用途を支える基盤です。標準化団体は、LE Audioの関連プロジェクトとして、高解像度・ロスレス音声、空間オーディオ、サラウンド音声などの仕様開発を進めています。HDTは、こうした音声用途に必要な伝送容量を増やす技術として位置づけられます。

製品でHDTを利用するには、送信側と受信側の双方が対応する必要があります。規格に機能が追加されても、すべてのメーカーが採用するとは限らず、現行製品はソフトウェア更新だけでは対応できません。利用開始には、対応チップを搭載したスマートフォンと、HDT対応のイヤホンやヘッドホンが必要です。