MetaにAI学習用データの取得を承認した責任者の特定を命令
出典: bittorrent.com

裁判所が求めたのは承認者と判断の経緯

米カリフォルニア北部地区連邦地裁のトーマス・ヒクソン判事は、Metaに対し、AI学習用にシャドーライブラリーから書籍を取得・ダウンロードする判断をした、または承認した人物を特定するよう求めました。対象はRichard Kadreyらの著者による訴訟や、出版社Entrepreneur Mediaなどが起こした複数の訴訟です。

命令では、正式な決裁者に限らず、取得やダウンロードを決めた人、承認した人を含む質問に回答するよう求めています。Metaは関与した人物の氏名だけを示す案を提示しましたが、裁判所は、役割や関与時期などを含む質問を狭く解釈しないよう判断しました。

裁判所は、複数人で協議して進めたため単独の決定者はいない、というMeta側の説明も採用しませんでした。質問は一人だけでなく、判断に関わった全員を対象にしていると指摘しています。

著者側はトレント利用の承認経路を問題視

著者側は、Metaが2022年から2024年にかけてLibGenやAnna’s Archiveなどのシャドーライブラリーから、BitTorrentで書籍を取得したと主張しています。BitTorrentは利用者同士がファイルをやり取りする方式です。著者側は、Metaがダウンロード時に他の利用者へ作品を送信するシーディングも行ったと主張しました。

Metaは、取得を実行した従業員が「技術的に」判断したにすぎず、権限者は決めていないという立場を示しました。一方、従業員の証言には、学習用データの利用にはディレクターまたは副社長級の承認が必要だったとの説明や、Anna’s Archiveからの取得が一度止まり、その後再開したとの内容があります。

Entrepreneur Mediaは、担当者や管理職に加え、誰がトレント方式を選び、アップロードを承認したかも明らかにするよう求めていました。Metaはアップロードを承認した人物を把握していないと回答しましたが、裁判所は、シャドーライブラリーからの取得やダウンロードを決めた人物について、さらに回答するよう命じました。

シーディングは利用者への送信を伴う

トレントの「シーディング」は、ダウンロードしたファイルを他の利用者へ共有することです。著者側は、Metaが大容量のデータを取得する際にシーディングもしたと主張し、Metaはそれを防ぐ対策を講じたと説明しています。

BitTorrentのヘルプでは、Torrent Feedで対象のトレントを選び、「Actions」から「Remove」を選ぶ方法を案内しています。同じ画面の「Files」で、個別ファイルのスイッチをオフにする手順もあります。

uTorrent Webのヘルプにも、トレントを選んで「Actions」から削除する手順があります。「Files」で共有を止めたいファイルのスイッチをオフにする方法もあります。

命令はサーバーの記録提出も対象

裁判所は、Metaがトレントに使ったサーバーや仮想マシン、AWSインスタンスのコマンド履歴ファイルを提出するよう命じました。著者側は、記録から作品のシーディングや、その防止策の実態を示す証拠が得られる可能性があると主張しています。

Metaは、AI学習に使わなかった海賊版の作品がどう扱われたかについても回答する必要があります。取得後の処理と承認者の特定が、今回の証拠開示命令の対象になりました。

この命令は証拠開示をめぐる判断で、著作権侵害の有無を最終判断したものではありません。命令はKadreyらの訴訟に加え、Entrepreneur Media、Chicken Soup for the Soulなどが関わる複数の訴訟を扱っています。

先行するフェアユース判断との違い

Kadreyら13人の著者が起こした別の訴訟では、2025年に書籍を使ったAI学習についてフェアユースが争われました。フェアユースは、一定の条件で著作物の利用を認める米国著作権法上の考え方です。

その訴訟で裁判所は、提示された証拠に基づきMeta側の部分的なサマリージャッジメント申立てを認め、著者側の申立てを退けました。判断では、モデルが書籍の有意な量の文章を出力することや、著者の市場が損なわれることについて、著者側の主張・証拠が十分でないとされました。