
Microsoftの医療AI「MAI-DxO」は、模擬症例を使った評価で一般医より高い診断精度を示しました。患者の訴えを受けて追加の質問や検査を選ぶ方式で、診断精度と検査費用をあわせて評価しました。ただし、この結果は実際の診療で患者の診断や転帰が改善することを示すものではありません。
診断精度は複雑な症例で83.2%
研究チームは、段階的な診断を評価する仕組み「SDBench」を作りました。診断する側は短い症例情報を受け取り、追加の質問や検査を選んでから最終診断を提示します。
評価には、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)の臨床病理カンファレンス症例304件と、救急部門から入院した患者の症例325件を使いました。症例には、よくある病気からまれな疾患まで含まれます。
複雑なNEJM症例で、MAI-DxOは83.2%の診断精度を記録しました。参考資料を使える一般医は36.1%、参考資料なしでは約22%でした。救急患者の症例では、MAI-DxOが80.3%、一般医が46.8%でした。
質問と検査を選びながら診断
MAI-DxOは、症状や検査結果を一度にすべて入力して答えを出す方式ではありません。患者の主訴から始め、診断に必要な情報を得るための質問や検査を選び、情報が増えるたびに診断候補を見直します。
SDBenchでは、情報要求を仲介するエージェントが症例記録に基づいて回答し、別のエージェントが最終診断を評価します。検査費用は医療機関の料金表を基に推計し、質問や診察には固定の診察費用を設定しました。
費用制限を設けない設定では、MAI-DxOの平均費用は5,431ドル(約85万円)でした。費用制限に応じて、平均2,241ドル(約35万円)で80.9%、1,303ドル(約20万円)で79.6%の精度を記録しています。これらはベンチマーク上の推計費用です。
o1-previewの救急研究とは評価方法が異なる
別の研究では、OpenAIの推論モデル「o1-preview」を、救急外来の実患者79人の症例で評価しました。診断時点は、救急到着時のトリアージ、医師の初期評価、入院時の3段階です。
この研究では、電子カルテの情報を各時点でモデルに入力し、医師の鑑別診断と比較しました。MAI-DxOの研究では症例ごとに質問や検査を選ばせますが、o1-previewの研究では実際の患者記録から作成した各時点の情報を使っています。
ARISE Networkの研究者らは、o1-previewが救急症例の各診断時点で医師を上回ったと報告しました。一方、MAI-DxOの精度比較は一般医との模擬症例評価で、専門医や実際の診療チームとの比較ではありません。
実診療での導入には別の評価が必要
救急部門で複数の言語モデルを使う意思決定支援システム「SHAKED」を調べた前向き研究では、4週間に1,138人を分析しました。導入後、医師による利用率は68%から30%に低下し、負荷に応じて利用が減る傾向が示されました。
同研究では有害事象は検出されず、抽出した出力100件のうち99件が専門家から臨床的に適切と評価されました。一方、救急部門の滞在時間は両グループとも4.9時間で、相談時間が短縮する傾向も統計的に有意ではありませんでした。
別の前向き実現可能性研究では、患者が診察前に会話型AI「AMIE」とやり取りし、医師がその内容を確認しました。登録114人のうち98人がAIとの対話と診察を完了しました。安全基準に基づく対話の中断はありませんでしたが、監督者は1件の誤情報を記録しました。
この研究では、医師は記録を確認した44件のうち33件で診察準備に役立ったと回答し、25件では診療行動が変わる可能性があるとしました。評価対象は対話の安全性や質、利用者の受け止め方で、患者の診断精度や転帰の改善ではありません。










