Agility Robotics' Digit humanoid robot uses NVIDIA's Halos system to help safely work around humans. The humanoid robot is seen from behind while standing in a warehouse aisle as a person passes by in the distance.
出典: cdn.arstechnica.net

自動運転車向けの安全技術をロボットへ

NVIDIAは、自動運転車向けに開発してきた安全技術を、工場や倉庫などで人とともに働くロボットにも広げています。2026年6月に発表した「Halos for Robotics」は、ハードウェア、ソフトウェア、センサー処理を組み合わせ、ロボットの安全機能を開発・運用するための基盤です。

NVIDIAのロボティクス担当者は、AIモデルとロボットの能力が高まるなか、安全性が普及の課題になると説明しています。同社は、倉庫の自律搬送ロボットや工場内のヒューマノイド、手術支援ロボットなど、用途ごとに異なる環境での運用を想定しています。

従来の自動運転車向け機能安全は、自動車各社や国をまたいで定義を共有しやすい一方、廊下を走る掃除ロボットと重量物を運ぶフォークリフトでは、考慮すべき危険が異なります。NVIDIAは、開発者が用途に応じて安全機能を設定できる仕組みを目指すとともに、柔軟性を高めながら基盤全体の制御を保つことも課題に挙げています。

計算基盤とセンサーを安全機能につなぐ

Halosの基盤となるIGX Thorは、ロボットや産業用途向けの計算モジュールです。NVIDIAによると、安全関連の処理を担う独立したプロセッサーを備え、通常のAI処理と安全機能を同じプラットフォーム上で動かします。

ソフトウェアのHalos OSは、ハードウェアやソフトウェアの状態を監視して異常を検出する設計です。また、安全上重要な処理を分離し、ほかの処理からの干渉を避ける機能を含みます。Halos Coreは、IGX Thor上で安全アプリケーションを開発・実行するための基盤です。

Holoscan Sensor BridgeはセンサーやアクチュエーターをIGXに接続し、安全処理の経路をセンサー側まで広げます。NVIDIAは、センサーデータの破損を識別する仕組みについて説明しており、カメラなどの入力を安全関連の処理につなぐ構成です。仮想環境でのロボット試験や、開発中の安全上の問題に助言する検査プログラムも、Halosの提供内容に含まれます。

安全機能はロボットの用途に合わせて設計

機能安全とは、電気・電子・プログラム制御の故障や異常が起きても、安全機能を保つための設計を指します。中央労働災害防止協会のロボットシステム向けマニュアルでは、リスク評価から安全目標を定め、制御による対策を試験・評価する手順を扱っています。

中央労働災害防止協会は同マニュアルで、ISO 10218を産業用ロボットシステムの設計要求に関わる規格、ISO 13849を制御システムの要求安全度水準を決める際に使う規格として取り上げています。NVIDIAも、ロボットの安全をハードウェアだけで完結させず、ソフトウェアやセンサー、用途別の安全機能と結びつけています。

安全対策はロボット本体だけでなく、作業場所や作業内容にも左右されます。NVIDIAの担当者は、見通しの悪い通路ではロボットが角の手前でほぼ停止する例を挙げ、工場や病院など予測しにくい環境に応じた安全機能が必要だと説明しています。

Digit 5などで導入が進む

米Agility Roboticsのヒューマノイド「Digit 5」は、Halosを採用した最初のロボットとして紹介されています。安全センサーや関連ハードウェアを機体に組み込み、従来のDigitの運用で使われていた作業セル周囲の外部センサーへの依存を減らす構成です。

NVIDIAは、この構成によって安全機能をロボットとともに移動させ、工場や倉庫で新しい作業を始めるたびに専用設備を設けずに済む運用を目指すと説明しています。これは同社が示す導入の狙いであり、あらゆる作業環境で安全性が一律に確保されることを意味するものではありません。作業内容や周辺環境に応じた安全設計が前提です。

Boston DynamicsはSpot、Stretch、Atlasを含むロボット群を対象に、Halosの安全認定プログラムの初期パートナーとなっています。自律フォークリフトなどを手がけるKION Groupや、NVIDIAのヒューマノイド向け基盤モデルを使うロボットを開発するLGも、Halosの導入に取り組んでいます。NVIDIAは、複数の作業や環境でロボットを使うには、安全性の向上が生産現場への展開に欠かせないとしています。