
メキシコサンショウウオ(通称アホロートル)は、通り抜ける穴の大きさを見分け、暗闇でも大きい穴を選ぶ傾向を示しました。24匹の幼体を使った実験では、解析対象の22匹すべてに、大きい穴を選ぶ統計的に有意な偏りが見られました。この結果が示すのは穴の大きさを見分ける能力であり、数を数えたり数学的に考えたりする能力ではありません。
22匹全てに見られた大きな穴への偏り
実験では、生後約7カ月のアホロートル24匹を水槽で飼育し、仕切りに開けた2つの円形の穴のどちらを通るか記録しました。どちらの穴も通り抜けられる大きさでしたが、一方をもう一方より大きくしました。
研究者らは18日間にわたり、穴の大きさの組み合わせを6通り試しました。各組み合わせを3日間続け、期間の途中で仕切りの向きを反転させて、左右どちらかを選びやすい習慣の影響を抑えました。
解析対象の22匹は、6通りすべてで大きな穴をより頻繁に選びました。穴の大きさの差が広がるほど、大きい方への偏りも強まりました。一方、2つの穴が全体に大きい場合は選好が弱まり、相対的な大きさだけで選択が決まるわけではない可能性が示されました。
夜間も続いた選択
暗闇でも、大きな穴を選ぶ傾向は続きました。夜間はアホロートル全体の活動が少なく、仕切りを通る回数も減りましたが、移動したときに大きな穴を選ぶ傾向は昼間と同程度でした。
実験で記録したのは、2つの穴を通る回数の違いです。結果が示すのは通り道の大きさを区別する行動であり、数量を数える能力や一般的な知能の尺度ではありません。
アホロートルは視力が弱く、濁った水域にすむ動物です。研究者らは、視覚に頼らず周囲を移動する仕組みを考えるには、動物が環境をどう知覚するかを踏まえて認知能力を調べる必要があると述べています。
側線系が関わる可能性
研究者らによると、アホロートルには水の動きやわずかな圧力変化を検知する側線系があります。この感覚系が穴の大きさを見分ける手がかりになった可能性はありますが、今回の実験では選択の仕組みを特定していません。
2019年の魚類の側線系に関するレビューでは、この仕組みは体表に分布する感覚器官を通じて水の動きを捉える機械感覚系として説明されています。魚はその感覚情報を処理し、行動に利用します。このレビューは魚類の側線系を扱っており、アホロートルが穴の大きさを判断する過程を明らかにしたものではありません。
アホロートルの側線系が実験中にどのような水の変化を捉えたかは、今後調べる必要があります。実験で観察された選択と、側線系が関わったという仮説は分けて考える必要があります。
飼育環境や保全との接点
アホロートルは失ったり傷ついたりした体の一部を再生する能力で知られていますが、行動や認知について分かっていることは比較的少ないとされています。今回の実験では、通り道の選択から行動や認知の一面を調べました。
研究者らは、行動や認知能力への理解が、保全や飼育下での福祉の改善、再生研究の支援に役立つ可能性を挙げています。これは研究者らが示した意義であり、今回の穴選択実験が保全や飼育方法の改善を実証したわけではありません。
研究結果は2026年、動物行動学の学術誌「Animal Behaviour」に掲載されました。暗闇で大きな穴を選んだ観察から、視覚以外の感覚が行動に関わる可能性がうかがえます。手がかりとなる感覚や判断の過程を特定するには、仕組みに焦点を当てた調査が必要です。










