インド、24カ月で国産GPU開発を目指す SHAKTI・VEGAの商用化も計画
出典: pib.gov.in

国産GPUの開発目標は約24カ月

インド電子情報技術省(MeitY)は、約24カ月をかけて国産GPUの開発を目指す方針です。GPUは画像処理向けに設計されたプロセッサーで、多数の演算を並列に処理でき、大規模言語モデルの学習などにも使われています。CPUが幅広い処理を担うのに対し、GPUは並列処理を必要とする計算に強みがあります。

MeitYのクリシュナン次官は11月4日のインタビューで、India Semiconductor Mission 2.0の下で国産GPUの開発を目指すと述べました。GPUは、AI開発を支える5つの層のうち、エネルギー、計算基盤・サーバー、AIモデル、アプリケーションと並ぶ「アクセラレーターチップ」に位置付けられています。

GPU計画は初期段階です。MeitYは、開発を担うメーカーやチップ供給元、主な対象とする処理を公表していません。GPUはAI処理にも使われますが、AI専用アクセラレーターは特定のAI計算に最適化されており、用途や設計が異なります。

SHAKTIとVEGAは商用市場を目指す

インドはGPUとは別に、SHAKTIとVEGAのプロセッサーを商用市場へ展開する方針です。両者はRISC-Vを基盤とするCPU設計で、今回目標に掲げたGPUとは異なる種類のプロセッサーです。

RISC-Vは、拡張や用途別のカスタマイズが可能なオープンな命令セットアーキテクチャー(ISA)です。ISAはプロセッサーが実行する命令の仕様を定めます。RISC-Vでは、その仕様を基に用途に合わせたプロセッサーを設計できます。SHAKTIはIITマドラスの学術プロジェクトとして2014年に始まり、プロセッサーに加えて接続回路や検証環境などの開発も目指してきました。

SHAKTIのプログラムでは、プロセッサー設計のソースコードなどをBSDライセンスで公開し、利用者が改変や再配布をできるとしています。RISC-Vの仕様を利用する設計者は、独自の命令セットを一から作らずにカスタムプロセッサーを設計できます。SHAKTIの開発者であるNeel Galaは、RISC-Vが組み込みシステムから高性能計算まで、用途に応じた設計の基盤になると説明しています。

VEGA搭載機器や応用例が登場

VEGAのET301を搭載した開発ボード「Aries 3.0」は2024年に紹介されました。ET301は最大100MHzで動作する32ビットプロセッサーで、26KBのSRAMを備えています。センサー、ウェアラブル機器、IoT機器などを想定した設計です。

2026年9月のSEMICON Indiaでは、SHAKTIを使った水面清掃ロボット、VEGAを使ったデジタル聴診器、森林環境の監視システムが発表されました。聴診器は心音・肺音を取り込み、リアルタイムのフィルタリングや録音、遠隔モニタリングに対応します。機械学習を用いた心雑音のスクリーニング機能も備えています。水面清掃ロボットは、池や寺院の水槽など、内陸の水域を清掃する用途です。

デジタル聴診器を開発したチームは、Digital India RISC-V Grand Challengeで第2位となり、賞金として30万ルピーを獲得しました。コンテストには1,236チーム、5,045人が参加し、3チームに総額60万ルピーの賞金が授与されました。これらは、国産プロセッサーを開発ボード上の設計から機器へ実装した事例です。

半導体市場の拡大を見据えた施策

政府は国産プロセッサーの設計・応用に加え、製造や人材育成を含む半導体産業の基盤づくりを進めています。SEMICON Indiaの最終日には、半導体設計、製造管理、AI、量子技術、起業支援、人材育成に関する15件の発表や連携がありました。

その一つとして、Semi-Conductor Laboratoryはウェハー製造工程を管理する国産の製造実行システムを発表しました。また、C-DACとBharat Electronicsは、高性能計算、AI、データセンター向けの国産ソリューションを共同開発・提供する協力を発表しました。MeitYの設計連動型インセンティブ制度では、支援を受けた24社が、その後ベンチャーキャピタルなどから投資を得たとされています。

インド電子・半導体協会(IESA)の報告書は、インドの半導体市場が2026年の約640億ドル(約10兆円)から2035年に2,000億ドル(約32兆円)へ拡大する可能性を示しています。政府は国内需要や設計人材を製造、先端パッケージング、イノベーションへつなげるロードマップを掲げています。