タスマニア南方のパティエンス海山では、バスケットウナギが季節的に集まり、最大約280万匹に達すると推定されました。この研究では、海山周辺に集まる魚の規模と産卵との関係を調べ、集まりを一年の大半にわたって確認しています。
最大約280万匹、3,500トン超の集まり
バスケットウナギは南東オーストラリア沖の深海に生息するウナギの一種です。パティエンス海山はタスマニア南方にあり、周辺の複数の海山と比べても、この種が大規模に集まる場所です。
2023年から2025年にかけて行われた調査では、集まりは最大約3キロメートルの長さ、約2キロメートルの幅に広がり、海底から約150メートルの高さに及びました。バスケットウナギの生物量は3月の約750トンから5月には3,500トン超へ増え、最大約280万匹に達すると推定されています。
過去の調査結果も合わせると、集まりは12月から8月まで確認されています。個体数は南半球の秋にあたる3月から5月にピークを迎え、時期によってはオレンジラフィーも魚群の大きな割合を占めます。
ソナーと映像を組み合わせて種を判別
研究チームは海中の魚群をソナーで測定しましたが、音響反射だけではバスケットウナギとオレンジラフィーを区別できません。そこで、海中カメラの映像を音響データと組み合わせ、魚群に占める各種の割合を推定しました。
2015年4月に海山で捕獲されたバスケットウナギ20匹は、雌14匹、雄6匹の全個体が産卵の進んだ状態でした。撮影映像と音響測定から、当時の集まりには数万匹がいた可能性も示されていました。
バスケットウナギは海山の深く平らな斜面の周辺に多く、オレンジラフィーは比較的急な上部斜面に集まる傾向があります。魚種と場所の分布は時期によって変わるため、ソナーと映像を併用することで、魚群全体の規模を種ごとに見積もれました。
産卵を示す手掛かりと海山の地形
産卵期に捕獲された雌には成熟した卵があり、腹部が空の個体も見つかりました。産卵に備えて餌を食べなくなる可能性があり、調査で捕獲できた個体は7匹にとどまりました。産卵がいつ、どこで行われるかは、まだ特定されていません。
海山の地形と周囲の海流が魚の集まりにどう関わるかは、別の海域でも調べられています。北東大西洋のグレート・メテオール海山では、海底の地形と背景流や潮流との相互作用が、海山周辺の流れに特徴的な変化を生むと報告されています。
その研究では、生物の分布が海山より小さな範囲でまだらになる様子も示されました。パティエンス海山については、大陸棚に近い位置が魚の移動や周辺の海流に影響する可能性が仮説として挙がっていますが、ウナギがこの海山を選ぶ理由は特定されていません。
保護区で続く生態系の観測
パティエンス海山を含むフオン海洋公園には、120を超える海山があります。公園はバスケットウナギや商業魚種の産卵場を保護しています。海山周辺では速い流れが堆積物を洗い流し、サンゴなどのろ過摂食生物に餌となる粒子を運びます。
この海域では、底引き網漁によるサンゴ群集への影響を受け、1995年に370平方キロメートルの禁漁区が設けられました。1999年には海洋保護区となり、2007年にフオン海洋公園へ組み込まれました。
2007年の調査では、漁業停止から5年が経過した海山のサンゴに明確な回復の兆候は見られませんでした。2018年には、漁業が行われていた海山、現在も漁業が行われる海山、漁業の影響を受けていない海山を対象に、深海カメラによる再調査が進められました。
現在は、かつて底引き網漁が行われたパティエンス海山で、オレンジラフィーの個体群の回復や、漁業の影響を受けた場所で生きたサンゴが戻る兆候が観察されています。保護区で数年ごとに調査を続けることで、ウナギの集まりと生態系の変化を長期的に追跡できます。










