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妊娠中から2歳ごろまでに形づくられる腸内細菌叢と脳の発達との関係を調べる研究が進んでいます。腸内細菌叢は免疫や代謝に関わるほか、神経の発達に影響する信号を伝える経路にもなり得ます。自閉スペクトラム症などとの因果関係は確立しておらず、研究者は大規模な検証が必要だとしています。

妊娠中から2歳ごろまでの腸内細菌叢

乳幼児の腸内細菌叢は出生から2歳までに急速に形成され、免疫・代謝・神経発達に関わる信号を送る時期とされています。出産方法や授乳、母親の健康状態、食事、抗菌薬への曝露など、時期によって異なる環境要因が形成に影響します。

腸内細菌叢の「乱れ」は、細菌の種類や機能の偏り、成熟の速さの違いなどを指します。Wellcome LeapのFORMプログラムは、こうした変化が神経発達上の課題にどの程度関わるのか、また妊娠期や乳幼児期に機能を測定・支援できるのかを研究しています。

この研究は、出産方法や抗菌薬、人工乳を一律に問題視するものではありません。個々の要因が腸内細菌叢の機能とどう結びつき、脳の発達にどう関係するのかを調べています。自閉スペクトラム症との因果関係も確立しておらず、関連が示されても直ちに原因とは結論づけられません。

腸内細菌叢から脳へ伝わる信号

腸と脳の連絡経路には、迷走神経、細菌が作る代謝物、腸管ホルモン、免疫シグナルがあります。迷走神経は腸の状態を脳へ伝える経路で、マウスでは出生前に腸への神経線維が伸びています。新生児期に細菌由来の信号がこの神経を通じて脳へ届くかは、実証されていません。

短鎖脂肪酸は、腸内細菌が食物繊維を発酵させて作る代謝物です。腸の上皮を通過して迷走神経に作用するほか、血液脳関門を越えて脳に作用する可能性も研究されています。周産期のマウスでは血中の短鎖脂肪酸が測定されていますが、新生児の脳で信号として働くかは研究中です。

腸内細菌は腸管ホルモンの量にも関わり、これらのホルモンは迷走神経や脳の受容体に作用します。また、細菌由来の成分を認識する免疫受容体は周産期のマウスの腸や脳に存在し、炎症性サイトカインの放出につながる場合があります。こうした経路が新生児の脳にどう作用するかは、成人で知られている仕組みほど解明されていません。

FORMが検証する三つの課題

FORMは、母親と乳児の腸内細菌叢を一続きの発達環境として捉え、神経発達との関係を調べます。研究課題は、腸内細菌叢の機能差と神経発達の因果関係、機能を客観的に評価する方法、妊娠期・乳児期に機能を保護または回復する方法の三つです。

プログラムは、スクリーニングで認知・言語・社会性・実行機能の課題リスクを予測する方法や、腸内細菌叢に基づく機能障害を診断する方法の開発を目標にしています。提示されている精度は研究目標で、達成済みの診断性能ではありません。介入についても、健康な神経発達を支える有効性を検証する計画です。

動物研究では、母親の食事や免疫状態、抗菌薬への曝露が、子の腸内細菌叢や脳の発達、行動に関係した例が報告されています。特定の微生物や代謝物を使った介入で、動物モデルの代謝バランスや行動上の課題が改善した研究もあります。これらの研究は人への効果を確立するものではありません。FORMは因果関係を検証し、測定法や支援策につなげることを目指しています。

認知症研究との接点と限界

アルツハイマー病の前臨床段階を調べた横断研究では、認知機能が正常な164人のうち49人に、脳のアミロイドやタウの異常を示すバイオマーカーが見られました。この49人の腸内細菌叢は、バイオマーカーの異常がない人たちとは異なり、その構成はアミロイドやタウの指標と相関していました。

この研究では、腸内細菌叢の特徴を機械学習モデルに加えると、対象者の一部で前臨床段階のアルツハイマー病を予測する精度、感度、特異度が改善しました。研究は一時点での比較で、腸内細菌叢の変化が病気を引き起こすことや、乳児期の状態から将来の発症を予測できることを示していません。

妊娠期や乳児期の腸内細菌叢と、数十年後の認知症を結びつける仮説も提案されていますが、因果関係は確立していません。乳幼児期の脳の発達と成人後の認知症の双方で腸内細菌叢との関連が研究されていますが、それぞれの知見が同じ仕組みを示すとは限りません。発達段階ごとの信号や機能を測り、長期的な関連と因果関係を区別して調べる必要があります。