Cutaway centrifugal compressor jet engine. Lone Star Flight Museum 2002-7-AI-2-20A
写真: Bill Abbott / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons

AIデータセンターの送電網接続に年単位の時間がかかるなか、米国では退役航空機のジェットエンジンを改造したガスタービンで自家発電する動きが出ています。早く電力を確保できる一方、従来の発電所向けタービンより効率が低く、汚染物質の排出も多いという課題があります。

接続待ちが長引き、データセンターの稼働を左右

バージニア州北部では、100メガワット分を送電網に接続するのに約7年かかるとされています。エネルギー調査会社Rystad Energyのアナリストは、改造エンジンを使えばデータセンターを約24カ月で稼働させられる可能性があると述べています。

電力供給の遅れは、計画の変更にもつながっています。英国ロートンのデータセンターでは、地元電力会社が2030年代前半から半ばまで十分な電力を供給できないと伝えた後、Microsoftが主要顧客から撤退しました。

接続を希望する施設の増加に加え、発電設備や送電線の整備に時間がかかることも、送電網の制約につながっています。米国ではデータセンターの電力需要が増え、接続待ちが長期化しているほか、送電網の増強も課題になっています。

退役ジェットエンジンを使う発電設備

航空機由来のエンジンを使う設備は、ガスタービン発電設備の一種です。エンジン内で空気を圧縮し、燃料を燃やして高温のガスを作ります。そのガスでタービンを回し、発電機を動かします。

航空機ではエンジンが生む力を推進に使いますが、発電設備ではタービンの回転を発電機に伝えます。航空機用エンジンの中核を発電機の駆動に使う構成は、航空機由来のガスタービンに分類されます。

xAIはミシシッピ州に、改造エンジンを使うタービンを8基設置し、メンフィスのデータセンター「Colossus 2」への電力供給に使っています。この設備には、ボーイング機に広く使われるGE製エンジンが改造されています。

13基の設備を用意するCrusoe

AIデータセンターを建設するCrusoeは、PROENERGY製の改造エンジンを13基発注しています。PROENERGYは、出力50メガワットのPE6000を13基納入する契約を公表しました。

13基の合計出力は650メガワットです。PROENERGYの発表によると、設備はCrusoeが建設するデータセンター向けで、2027年夏までに納入する予定です。

Crusoeは2025年、テキサス州アビリーンにある最初のStargate拠点でガスタービンを採用しました。2026年9月にはBoom Supersonicから天然ガスタービン29基を12億5,000万ドル(約2,000億円)で購入する契約を撤回しましたが、Crusoeの広報担当者は、タービンを使う計画は続けると述べています。

速さと効率をどう見るか

航空機由来のタービンは、発電所向けに設計された大型の重構造タービンと比べ、小規模な設備をすばやく立ち上げる用途に向いています。ただし、起動時間は機種や発電所の構成によって異なります。排熱を利用する複合サイクル発電所と、単純なガスタービン設備も、同じ条件では比べられません。

たとえばGEのLM6000は、単純サイクルで5分の高速起動能力を示す一方、複合サイクル構成では高速起動でも30分とされています。大型の7HA.03は、ガスタービン単体なら全負荷まで10分、複合サイクル発電所では高速起動で30分未満とされます。起動の速さは、規模だけでは判断できません。

今回の改造エンジンは、通常のガス火力発電所向けタービンより効率が低く、汚染物質の排出も多いとされています。同じ出力を得るにもより多くの台数が必要になるため、導入の速さ、燃料効率、環境負荷を考慮して選ぶ必要があります。

自家発電が埋める範囲

米国では、データセンターの接続申請が電力会社の対応能力を上回る地域があります。Wood Mackenzieは、米国内で提案されているデータセンターの容量を134ギガワット、電力会社が供給を約束した新規容量を64ギガワットと推計しています。

送電網から独立して電力をまかなう設備は、接続までのつなぎや長期運用を想定して計画されることがあります。一方、データセンターの消費電力は短い時間単位で変動するため、系統から切り離した電源だけで対応するには技術上の難しさがあります。

燃料効率や排出の面で従来型の発電所向けタービンに劣るため、改造エンジンが電力需要を長期的に支える方式となるかは、導入の速さだけでは決まりません。