野生トマト由来のセスキテルペンを栽培トマトに導入したところ、葉の毛状器官に含まれる化合物は増えましたが、吸汁性害虫への抵抗性は得られませんでした。研究チームは、抵抗性には化学成分の合成を担う遺伝子群以外の遺伝的要素も必要だと結論づけています。
野生種の遺伝子群を栽培種へ導入
研究対象は、野生トマトの一種 Solanum habrochaites LA1777と、栽培トマト品種マイクロトムです。LA1777では第8染色体上のSsT2遺伝子群が、葉の腺毛で作られるセスキテルペンの合成に関わります。
腺毛は植物の表面にある毛状の器官で、内部には代謝物を蓄える空間があります。SsT2遺伝子群の主要な遺伝子はzFPSとSBSです。SBSはzFPSが作る前駆体を使い、α-サンタレン、β-ベルガモテン、α-ベルガモテンを合成します。
研究チームは交雑と戻し交配によって、LA1777由来の遺伝子をマイクロトムへ導入しました。この系統はMT-Sst2と名付けられ、野生種のセスキテルペン合成経路を持つ栽培トマトとして調べられました。
腺毛の形と貯蔵空間にも変化
トマトの腺毛には複数の種類があり、この研究が扱ったVI型腺毛は代謝物を内部の空間に蓄えます。栽培トマトのVI型腺毛はキノコ状で、腺の内部空間が小さい一方、LA1777では腺が丸く、内部空間も大きい形をしています。
MT-Sst2のVI型腺毛では、α-サンタレンやベルガモテン類が高い水準で作られました。研究チームによると、その量はLA1777のVI型腺毛よりも多くなりました。
MT-Sst2では腺毛内部の貯蔵空間も大きくなりました。ただし、腺毛の形はLA1777の丸い形には至らず、セスキテルペンの増加だけで野生種の形態全体が再現されたわけではありません。
化合物の増加だけでは抵抗性に至らず
セスキテルペンを多く含むMT-Sst2でも、調べた吸汁性害虫への抵抗性は得られませんでした。この結果から、研究チームは、LA1777で見られる抵抗性にはSsT2遺伝子群以外の遺伝的要素も関わると判断しました。
研究では、野生種のセスキテルペンの効果が害虫の種類によって異なる可能性も示されています。化合物を作る経路の導入と、特定の害虫への抵抗性の獲得は、同じ結果にはなりません。
栽培トマトではセスキテルペンの一部が細胞質で作られ、LA1777では葉緑体でも別の経路による合成が行われます。植物のテルペン類には、葉緑体に由来するもののほか、細胞質由来のセスキテルペンやモノテルペンもあります。
抵抗性に必要な要素の解明へ
野生トマトの腺毛では、葉緑体に由来するセスキテルペンが害虫への防御と関連づけられてきました。









