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出典: Frontiers

欧州産のキノコGanoderma lucidum(G. lucidum)に、245年ぶりにDNA解析が可能な基準標本が定められました。研究では、薬用キノコとして知られる東アジアのG. lingzhiとは別種であることを確認し、G. lucidumの英名として「False Lingzhi」を提案しています。分類の基準が整ったことで、両種の取り違えや、種名に基づく研究データの混同を見直す手がかりになります。

英国の保存標本をG. lucidumの基準に

G. lucidumはGanoderma属のタイプ種、つまり属の名前を定める基準となる種です。しかし、従来の基準は1781年の図版で、生物標本はありませんでした。研究チームは英国キュー王立植物園の菌類標本庫から、原記載に合う標本を選び、解釈基準標本(エピタイプ)に指定しました。

標本はイングランド南部で採集され、セイヨウハシバミ(Corylus avellana)の木材に生えていました。形態を調べるとともに、標本からDNAを採取して配列を解析し、種の識別に使う参照データを整えました。

研究では、G. lingzhiとG. lucidumが1200万年以上前に分岐したと推定しています。東アジアで「Lingzhi」または「Reishi」と呼ばれる薬用キノコは、欧州産のG. lucidumとは別の系統に属します。

公開ゲノムとDNAバーコードを再検討

研究チームが調べた公開データベース上のG. lucidumゲノム7件は、いずれも別種のものと判定されました。種名の誤認がゲノムデータにも及んでいたことになります。

DNAバーコードは、特定領域の配列を種の識別に使う方法です。キノコで広く使われるITS領域について、研究チームは1000件を超える配列を分析し、配列の類似度を照合する一般的な方法では、このグループの種を正しく識別できないと報告しました。系統樹上で配列の位置を調べれば、この問題を緩和できるとしています。

高い確度でG. lucidumと判定された149件の配列は、ユーラシアに分布し、北米、南米、アフリカへの導入も確認されました。研究チームは、種の識別では類似度だけでなく、系統関係も評価する必要があるとしています。

市販品のDNA鑑定で報告された結果

中国医学誌に掲載された別の研究では、Ganoderma属11種の標本など63件を分析し、ITS2配列とRNAの二次構造を比較しました。この研究は、G. lucidumとG. sinenseの子実体や市販品を、他のGanoderma種と区別できたと報告しています。

この研究は、中国で栽培されたG. lucidumと欧州産のものに違いがあることも報告しました。市販品の識別にITS2を使えるという結果は、対象とする種や配列領域、比較方法によって識別結果が異なり得ることを示す一例です。

2020年のPLOS ONE掲載研究では、G. lucidumとして販売された粉末6試料と乾燥試料1点を調べました。7試料すべてからG. lingzhiのDNAが検出され、研究チームはITS配列の系統解析による識別を有効な方法と評価しています。これは7試料の分析結果で、市販されるすべての製品を対象とした調査ではありません。

種名の整理が研究と流通に関わる

G. lingzhiは薬用キノコとして広く利用・研究されてきました。一方、G. lucidumは形態の似た複数のキノコに使われてきた経緯があり、両種の名前は研究や商業利用で混同されてきました。

Ganoderma属では、種や系統によってトリテルペノイドなどの成分組成や濃度に差があります。そのため、種名の誤認は、化学成分に関する研究結果をどのキノコに結びつけるかにも関わります。

研究チームは、G. lucidumを「False Lingzhi」と呼ぶことを提案しました。