Peatland Forest fires
写真: Muhammad Pasya Ramadhan / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

インドネシアで続く森林火災が、絶滅危惧種のボルネオオランウータンの生息地を脅かしています。火災は主要な生息地を含む森林や保護区にも広がっており、救助活動に加えて、泥炭地の再湿潤化や地域住民による予防活動の継続が求められています。

火災で救助された個体と生息地への影響

インドネシア森林省によると、9月22日までに救助された野生動物は100頭で、このうち53頭がボルネオオランウータンでした。中央カリマンタン州では、セバンガウ国立公園近くで見つかった約4歳のノヴィタが、手足に重いやけどを負い、リハビリ施設へ搬送されました。9月には、煙を吸い込んで呼吸困難に陥った成獣のオスが、治療を受けたものの死亡しています。

火災は、ボルネオ島に残るオランウータンの主要な個体群20のうち13が暮らす森林で発生しています。カリマンタン低地の保護区では火災が報告され、セバンガウ国立公園では主に周辺部にとどまる一方、グヌン・パルン国立公園とタンジュン・プティン国立公園では園内に燃え広がりました。公式データによると、タンジュン・プティンでは9月13日までに4,500ヘクタール超が焼失しました。

保護区外の森林も重要です。国際自然保護連合(IUCN)の霊長類専門家グループによると、野生のオランウータンのほぼ半数は、木材生産地や生態系修復地など、保護区に指定されていない森林に生息しています。西カリマンタン州の泥炭林では火災が発生し、企業の管理地内にある生息地も影響を受けています。

火災が続けば、個体の負傷や死亡に加え、森林の分断や餌となる樹木の損失が長期化するおそれがあります。2015年の煙にさらされた野生の成獣オス4頭を調べた研究では、煙の期間中とその後に休息時間が増え、移動時間や距離が減少しました。煙が晴れた後には脂肪の分解を示すケトンも増えており、研究チームはエネルギー消費の増加が関係した可能性を示しています。1997〜98年のエルニーニョに伴う火災では、ボルネオ島で数百万ヘクタールが焼け、当時のオランウータン個体群の最大3分の1が死亡した可能性があると研究者が指摘しました。

泥炭地を乾燥させない対策

エルニーニョに伴う干ばつは火災の危険を高めます。泥炭地では、森林伐採や農業のための排水も土壌を乾燥させ、燃えやすい状態にします。インドネシアの泥炭地を対象とした研究によると、2015〜19年に再湿潤化が有効だった約4,000平方キロメートルで、火災ホットスポットが最大22%減りました。

再湿潤化には、排水路をせき止めて水を保つ方法や、深井戸から水をくみ上げる方法があります。同研究では、深井戸はより広い範囲を湿らせられ、火災リスクの低減において水路のせき止めより効果が大きかったと報告されています。一方、水路のせき止めも、適切な場所に十分な数をまとめて設置すれば効果が見込めますが、設備の維持が欠かせません。

火災予防では、地域住民、政府機関、企業が連携する取り組みもあります。国連環境計画(UNEP)が支援したインドネシアの試行事業では、2021年に予防クラスターを設けた後、2022年の乾季に中部カリマンタン州プラン・ピサウ県で火災ホットスポットが見つかりませんでした。リアウ州プララワン県では報告された火災が2021年の139件から翌年88件に、南スマトラ州オガン・コメリン・イリル県では345件から109件に減りました。これらは連携型の予防事業の実績で、地域住民の巡回だけの効果を示す数字ではありません。

消火の先に続く復旧

インドネシア政府は8月以降、航空機64機と5万4,000人超を投入して消火にあたっています。IUCNの専門家グループは、現場の活動を支える資金や技術の提供に加え、泥炭地の保全・再湿潤化、地域の巡回活動、行政と住民の連携を続けるよう求めています。森林を植え直すだけでは再び燃える危険を抑えられず、植林地を守る仕組みも必要だと、ボルネオ・ネイチャー財団のアントン・ヌルチャヒョ氏は述べています。

2015年の火災後に設けられた泥炭地復旧機関は、乾燥した泥炭地の再湿潤化、在来植物の植生回復、地域の生計支援を柱に活動しました。地域消防団は復旧や火災予防の担い手ですが、6村を対象にした調査では、日常の運営費や再湿潤化設備の維持費が不足していることが課題として挙げられています。