
ソフトバンク創業者の孫正義氏が、中東の投資家から最大1000億ドルを集め、既存企業を買収してAIやロボットを導入するファンドの設立を検討していると、Financial Timesの報道を引用してTom’s Hardwareが伝えました。新興企業への出資とは異なり、すでに事業を持つ企業の業務に技術を取り入れる構想です。ただし、ファンドの設立や資金調達は確定していません。
既存企業の買収とAI導入を組み合わせる構想
Financial Timesによると、ファンドはAIやロボットをまだ導入していない企業を買収し、業務改善を通じて企業価値を高めることを目指します。ソフトバンクの従来の投資ビークルが主にテクノロジー企業へ資金を投じてきたのに対し、今回は既存の事業会社を取得対象にする構想です。
買収後の変革には、ソフトバンクのロボット・フィジカルAI部門「Roze」が大きな役割を担うと報じられています。フィジカルAIとは、AIをロボットなどの実機と結び付け、現実の環境で認識や動作を行わせる技術を指します。ファンドの資金を買収だけに使うのか、Rozeの開発にも充てるのかは定まっていません。
この構想に近い動きとして、ソフトバンクグループは2025年10月、ABBのロボット事業を53億7500万ドルで買収する契約を結びました。同社はこの取得をAIロボット事業の強化策と位置付け、AIなどの技術への投資で事業の成長を後押しする方針を説明しています。取得対象は産業用ロボットの開発・製造・販売を担い、従業員は約7000人です。
工場や物流での導入例
世界経済フォーラムとボストン・コンサルティング・グループは報告書で、従来型の産業用ロボットには適応力の限界や導入費用の高さがあった一方、AIや視覚システムとの組み合わせがロボットの柔軟性を広げていると説明しています。報告書は、学習を通じて変化のある作業に対応する方式や、自然言語の指示を受けて新しい環境で動く方式を挙げています。
世界経済フォーラムとボストン・コンサルティング・グループは、Amazonの物流拠点における移動ロボットやAIを使った仕分け、ロボットアームの連携例を紹介しています。また、FoxconnはAIロボットとデジタルツインのシミュレーションを使い、ねじ締めやケーブル挿入などを自動化したとされています。
BMWグループは米国の工場で、Figure AIの人型ロボットを使った生産・物流の試験を進めています。先行するFigure 02は、10カ月にわたりBMW X3の生産を支援し、車体工場で溶接用の金属部品を配置する作業を担いました。次のFigure 03は、ばらばらの部品を容器から取り出して台車に仕分け、組み立て場所へ運ぶ物流作業に投入される予定です。
投資拡大と資金面のリスク
ソフトバンクはOpenAIに約650億ドルを投じており、Financial Timesは同社の投資戦略で重要な位置を占めると報じています。OpenAIの企業価値にソフトバンクの財務が大きく左右される一方、OpenAIはまだ高い収益性を確立していないとも伝えています。Financial Timesは、新たな買収ファンドがAI関連投資を拡大する構想であり、資金調達と投資先の選定が論点になると報じています。
ソフトバンクは過去にも中東の政府系ファンドから大規模な出資を受けました。サウジアラビアの公共投資基金とアブダビのムバダラは、2017年のビジョン・ファンド1に参加しています。今回も孫氏はアラブ首長国連邦の有力投資家らに接触したと報じられていますが、最大1000億ドルの調達が実現するかは決まっていません。
ソフトバンクは直近で、利回り9.75%の社債発行により110億ドル超を調達したと報じられています。6月時点の純資産価値は72.3兆円、ローン・トゥ・バリュー比率は13%でしたが、資産の多くはArmやOpenAIなどのテクノロジー企業に結び付いています。そのため、追加の借入がなくても保有資産の評価が下がれば、同比率が上昇する可能性があるとされています。
買収後の運営が問われる
ソフトバンクはABBのロボット事業について、買収後に自社のロボット関連投資先の技術基盤などと組み合わせ、AIロボット分野の革新を加速する方針を示しました。ABB事業の取得は規制当局の承認などを条件とし、完了時期は2026年半ばから後半の予定です。買収価格は決済時の運転資本や純有利子負債などに応じて調整されます。
買収した企業へAIやロボットを導入するには、技術の導入に加えて、現場の業務手順や従業員との連携も関わります。BMWの事例では、ロボットが部品を仕分けた後、自動搬送車などが組み立て場所へ運び、従業員に必要な順序で部品を届ける流れが計画されています。世界経済フォーラムとボストン・コンサルティング・グループも、ロボット・AI・製造業の連携や、従業員の再訓練を導入拡大の条件に挙げています。











