
黒海で商船の航行リスクが高まる
トルコのハカン・フィダン外相は10月8日、ロシアとウクライナの黒海での攻撃が冬を前に激化し、船舶の航行安全を脅かしていると述べました。両国の攻撃が商船にも及ぶなか、トルコは地域が戦闘の新たな前線になるのを防ぐ必要があると訴えています。
フィダン外相はアンカラでハンガリーのアニタ・オルバン外相と共同記者会見し、両国が冬を前に軍事的優位を得ようと攻撃を強めているとの認識を示しました。トルコはロシアとウクライナの双方に攻撃停止を求め、黒海の安全確保と穀物輸送を目的とする提案への回答を待っています。
トルコはNATO加盟国でありながら、2022年のロシアによる全面侵攻後もモスクワ、キーウ双方と関係を保ってきました。フィダン外相は、トルコ船籍またはトルコ企業所有の商船も攻撃を受けたとして、黒海の安全問題は地域全体に関わる課題だと述べました。
トルコ海峡の軍艦規制と商船の安全
黒海と地中海を結ぶトルコ海峡は、ボスポラス海峡、マルマラ海、ダーダネルス海峡からなります。海上自衛隊幹部学校のコラムによると、1936年のモントルー条約はこの海峡の通航制度を定め、商船の航行と軍艦の通航を別々に規定しています。
海上自衛隊幹部学校のコラムによると、軍艦の通航制限は、黒海沿岸国かどうかや艦種、排水量、平時か戦時かによって異なります。トルコが交戦国ではない戦時には、交戦国の軍艦は原則として海峡を通航できません。トルコが交戦国となる場合などは、通航の扱いがトルコの裁量に委ねられます。
2022年の侵攻後、トルコ政府は黒海沿岸国かどうかを問わず、軍艦の海峡通過を認めないと通告しました。モントルー条約には、沿岸国の軍艦が母港へ戻る場合の例外もあります。これらの規則は軍艦の通航を扱っており、今回フィダン外相が懸念を示した商船の航行安全とは別の論点です。
穀物輸送を支えた合意は2023年に終了
2022年7月に始まった黒海穀物イニシアティブは、ウクライナの港から穀物などを輸出するため、国連、トルコ、ウクライナ、ロシアが関わった合意です。合意では、貨物船が事前登録と検査を受けた後、定められた航路を通る仕組みが設けられ、イスタンブールに共同調整・検査センターが置かれました。
この合意は複数回延長された後、ロシアが2023年7月に延長に応じず、終了しました。日本外務省によると、発足から終了までに穀物など3,200万トン超が輸出されました。
日本外務省は、国連とトルコが仲介を続けたものの、ロシアが参加を終了したことで合意が終わったと説明しています。日本政府は、合意終了が世界の食料供給に及ぼす影響を注視し、ウクライナからの輸出再開を求める考えを示しました。
輸送の停滞は食料供給にも関わる
国連食糧農業機関(FAO)は2022年の分析で、ロシアとウクライナが穀物の国際輸出に占める割合は合わせて3分の1超だと説明しました。同機関は、自国の小麦供給の30%超を両国に頼る国が約50カ国あるとして、輸出の混乱が食料供給に及ぼすリスクを指摘しています。
FAOは別の2022年のノートで、ロシアとウクライナのいずれか、または両国が、小麦や大麦、とうもろこしなど複数の農産物で世界の輸出上位3カ国に入ると記しました。黒海北部の保険料上昇や戦争による保険適用の制約は、輸送費と食料の輸入価格を押し上げる要因として挙げられています。










