パーキンソン病の成人294人を最長7年間追跡した研究で、身体活動の多い人ほど、思考・記憶と運動症状の悪化が緩やかな傾向が見られました。 週8時間を超えて活動したグループでは、認知機能テストの平均点がほぼ変化しませんでした。 ただし、運動が症状の進行を遅らせたと証明する研究ではなく、活動量と変化の関連を示したものです。
活動時間が多いグループで認知機能の低下が小さい
対象者は軽度から中等度のパーキンソン病がある成人で、平均年齢は66歳でした。 研究チームは仕事、家事、趣味や余暇での活動を質問票で調べ、活動時間などをもとに3グループに分けました。 週4時間以下が最も活動の少ないグループ、4〜8時間が中間、8時間超が最も多いグループです。
毎年、思考や記憶を測る30点満点の検査と、パーキンソン病の運動症状を評価する検査が行われました。 認知機能の年間低下幅は、活動の少ないグループで平均0.478点、中間グループで0.090点、活動の多いグループで0.007点と推定されました。 最も活動の多いグループでは、平均点がほぼ維持されていました。
運動症状の評価は0〜132点で、点数が高いほど症状が重い尺度です。 年間の変化は、活動の少ないグループでは0.143点の上昇、中間グループでは0.225点の低下、活動の多いグループでは0.783点の低下でした。 年齢、性別、罹病期間を考慮した分析でも、活動の多いグループは少ないグループに比べ、認知機能の低下と運動症状の悪化が緩やかでした。
活動量の測り方や研究結果の限界
研究チームは、活動時間だけでなく、強度を加味した活動量と、激しい活動に費やした時間も調べました。 これらの指標でも、活動が多いことは認知機能と運動症状の緩やかな悪化と関連していました。 中強度の活動には速歩やゆったりした水泳、より強度の高い活動にはランニングや速い自転車走行などが含まれます。
活動量は参加者自身の回答に基づくため、実際の活動を正確に反映していない可能性があります。 また、研究開始時点で参加者の思考・記憶機能はおおむね保たれており、研究チームは結果の解釈に注意が必要だと述べています。 運動そのものが症状の進行を遅らせるかを確かめるには、さらなる研究が必要です。
今回の結果を説明する特定の生物学的仕組みは、この研究では確かめられていません。 神経可塑性とは、脳が外部環境の変化や内部の損傷に応じて適応する性質を指します。 この適応は分子、細胞、神経ネットワークの各段階で起こり、神経変性では残った神経細胞が新たなつながりなどを通じて機能を補う場合があります。
パーキンソン病における神経可塑性を扱ったレビューは、身体活動やさまざまな治療がこの性質に与える影響も検討対象にしています。 これは、運動と認知・運動機能の関連を考える際の研究領域を示しますが、今回の追跡研究で観察された差を説明する仕組みが確定したことを意味しません。 観察された関連と、その生物学的な原因は分けて捉える必要があります。
運動を組み合わせた介入研究との違い
パーキンソン病の人を対象とした別のメタ解析では、運動課題と認知課題を組み合わせる「運動・認知トレーニング」が検討されました。 メタ解析は、複数の研究結果を統合して効果を推定する手法です。対象となったのは11研究、計597人で、参加者の平均年齢は68.9歳でした。
対照群と比べたトレーニング群の二重課題歩行速度の平均差は毎秒0.12メートルで、95%信頼区間は0.08〜0.17メートルでした。 歩行中の歩調は毎分2.91歩、歩幅は10.12センチメートル、歩行速度の二重課題コストは8.75%改善する方向の差が報告されました。 二重課題とは、異なる目的を持つ二つの課題を同時に行うことです。
このメタ解析が測定したのは、認知課題を伴う歩行などの二重課題能力であり、今回の7年追跡研究が測った認知機能全般の年間変化とは異なります。 したがって、二つの研究は対象と評価項目が違います。 メタ解析では二重課題の歩行指標への効果が報告されましたが、今回の追跡研究の認知機能の変化を直接裏付ける結果ではありません。
運動の種類と頻度に関するガイドライン
パーキンソン病財団の運動ガイドラインは、中強度から高強度の運動を週150分行うことを推奨しています。 有酸素運動は週3日、1回30分以上が目安で、速歩、ランニング、自転車、水泳、ダンスなどが例に挙げられています。 筋力トレーニングは連日を避けて週2〜3日、1回30分以上とされています。
ストレッチは週2〜3日、できれば毎日行う構成です。 バランス、敏捷性、マルチタスクを含む運動も週2〜3日、可能なら日々の活動に取り入れるとしています。 ヨガ、太極拳、ダンス、ボクシングなどが例示されています。
ガイドラインは、運動は時間をかけて段階的に増やし、身体機能や認知機能の変化に応じて内容を調整するよう勧めています。 薬が効いている「オン」の時間帯に運動し、一人で安全に行えない場合は付き添いを得ることも示しています。 歩行のすくみ、血圧低下、バランスや身体認識の変化に伴う安全上の注意も、運動の種類ごとに挙げられています。









