ロシアによるキーウのデータセンターへの攻撃が、インターネット接続や携帯電話サービス、メディアの配信を妨げています。ウクライナでは通信施設の国外移転や地下化が進む一方、ゼレンスキー大統領は、高速なジェット推進型ドローンに対応する防空能力の強化が必要だと訴えています。
複数の通信施設が相次いで被害
9月23日には、データセンターと通信・インターネットの基幹設備が入るキーウのオフィスビルに、ロシアのジェット推進型攻撃ドローン「ゲラン5」が命中しました。通信・ITサービス事業者のCOSMONOVA|NETは、9月25日の攻撃で中核ネットワークが損傷したと利用者に通知し、翌日の再攻撃後には接続が停止したと告知しました。
被害はほかの事業者にも及んでいます。ウェブサイトの運用設備を提供するCityHostは、9月23日に二つのデータセンターが部分的に破壊され、サイトを収容するサーバーを欧州連合(EU)域内へ移しました。インターネット接続事業者のPavutynaはネットワークの「ほぼ半分」を失ったとした後、復旧を報告しています。
9月25日には通信事業者Datagroupのオフィスへのドローン攻撃で、キーウで4人が死亡しました。9月27日には携帯電話事業者KyivstarとVodafone Ukraineのデータセンターが攻撃対象となり、9月29日にはUkrtelecomもキーウで攻撃を受けましたが、同社のサービスは中断しませんでした。
紛争のデータを分析するACLEDの欧州担当アナリスト、テティアナ・ガヴィウク氏は、通信施設への攻撃自体は以前からあったものの、今回は数日の間に複数の事業者と施設が被害を受けた点を特徴として挙げています。ガヴィウク氏は、複数の接続拠点を狙う地理的な広がりについて、個別事業者の停止だけでなく、通信経路の切り替えを難しくする意図がある可能性を指摘しています。
放送や空襲警報へのアクセスにも影響
公共放送Suspilneでは、COSMONOVA|NETへの攻撃後、ウェブサイトの複数の動画プレーヤーが一時的に利用できなくなりました。Susp ilneは国境なき記者団(RSF)に、攻撃で影響を受けた機能やサービスの大半がすでに復旧したと伝えています。
民間テレビ局Priamiyではサイトが利用不能となり、Novyny Liveは放送上の問題を、Kanal 5は信号伝送の支障を報告しました。北東部ポルタヴァでも地域メディアKoloのサイトが停止し、影響はキーウ以外にも及びました。
ACLEDは、ネットワークの損傷が空襲警報などの重要情報やデジタルサービスへのアクセスを妨げたとしています。ウクライナの当局者や業界関係者は、反復する攻撃が銀行、決済システム、公共サービスを支える通信網を損なうおそれがあると警告しています。RSFは、通信施設への攻撃がメディアの活動と住民の情報を得る権利を侵害すると非難し、民間インフラへのこうした攻撃を戦争犯罪に当たると評価しました。
ジェット推進型の高速化で迎撃率に差
シャヘドは、イランで開発された無人機の系列で、ロシアはその設計を改良して攻撃に使用しています。従来のシャヘド136は後部のエンジンとプロペラで飛行し、速度は約185キロメートル毎時です。ジェット推進型のシャヘドは最大500キロメートル毎時で飛行し、ウクライナ側が探知して対処する時間を短くするとともに、現在の迎撃ドローンの多くを上回る速度で飛行します。
ゼレンスキー大統領は10月4日、従来型のシャヘド系ドローンに対する迎撃率が85%を超える一方、より高速なジェット推進型では50〜60%に下がると述べました。ウクライナでは防空用の迎撃ミサイルの備蓄も消耗しており、ロシアの長距離攻撃への対応が課題になっています。
通信経路の分散と国外移転を進める
攻撃対象となったデータセンターには、データを保存する設備に加え、通信の基幹設備も置かれていました。ネットワーク間の接続の仕組みの一例が、事業者のネットワーク同士で通信を交換するインターネット交換点(IXP)です。IXPを運営するNetnodは、接続事業者のルーター同士が交換点を通じて通信をやり取りする構成を採っています。
Netnodは一部都市で、別々の施設にある二つの交換設備へ接続できるサービスを提供し、複数の独立した光ファイバー経路を用意しています。
ウクライナの元国防副大臣カテリーナ・チェルノホレンコ氏によると、同国は一部のデータセンターを国外へ移し、地下の通信網にも投資してきました。同氏はすべてを地下へ移せるわけではないとして、弾道ミサイルやドローンに対する防空能力を高めるため、同盟国の支援が必要だと述べています。
冬の停電に備え、衛星通信も予備回線に
ウクライナのメディア関係者らは、冬に通信障害と電力設備への攻撃による停電が重なることを懸念し、衛星インターネットサービスStarlinkの機器を予備回線として検討しています。ウクライナ政府はインフラ保護のため、地下施設や国外施設の活用を進めています。
停電時の避難・支援拠点「不屈の拠点」については、ウクライナ政府が2025年12月に運用ルールを変更しました。デジタル変革省は、各拠点に電力網に依存しないインターネット接続かStarlink端末を求め、ケーブル網がない場所ではStarlinkを使う方針を示しています。
Starlinkは地上の通信網が停止した際の代替手段となる一方、衛星網を地上側のネットワークにつなぐゲートウェイに依存します。ポーランドの国営Exatelが運営するStarlink地上局では火災が起き、放火の可能性が調べられています。








