
資金調達でアルツハイマー病領域にも進出
創薬AI企業のPathosは、ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)が主導するシリーズEの資金調達で2億3,700万ドル(約370億円)を調達し、評価額は約30億ドル(約4,700億円)となりました。Pathosはがん領域を中心に進めてきた事業を神経疾患にも広げ、BMSとの提携ではアルツハイマー病の治療薬開発に取り組みます。
今回の調達は完了しています。既存投資家も参加し、調達資金はAI基盤の拡張と、同社が進める臨床段階の候補薬の開発に充てられます。
Pathosは、臨床試験に進んだ薬の多くが患者に届かないという創薬上の課題に対し、AIで開発判断を支援する方針です。調達後は、がん領域の候補薬を臨床試験の重要な段階へ進めるほか、アルツハイマー病領域でBMSとの取り組みを進めます。
Foundryが候補薬の選定や試験設計を支援
PathosのAI基盤「Foundry」は、専門化された数千のAIエージェントを使い、臨床データ、ゲノム情報、生体試料のデータ、競合する開発計画などを分析します。その分析は、候補薬の選定、対象患者の絞り込み、臨床試験の設計や見直しに役立てられます。
Foundryを使った候補薬の迅速な追加などを経て、Pathosは臨床段階にある開発品を4つに増やしました。今回の資金は、プラットフォームの能力拡張に加え、これらの開発計画を進めるために使われます。
最優先の一つは、TROP2とHER3を標的とする二重特異性抗体薬物複合体(ADC)のJSKN-016です。Pathosは、同薬を登録申請に向けた試験へ進める方針を示しました。ほかに、前立腺がんや多発性骨髄腫を対象とするポセンブロディブ、アストラゼネカと提携するAZD4241、METキナーゼ阻害薬DO-2の臨床開発にも資金を充てます。
アルツハイマー病の治験では患者選定と評価指標が焦点
アルツハイマー病の治療薬を調べる臨床試験では、バイオマーカーが患者の参加条件や治療効果の評価に使われています。バイオマーカーは、血液などの体液、画像、デジタル機器で測定する指標です。2025年の治療薬試験を対象とした調査では、84%にいずれかの種類が組み込まれていました。
同調査では、バイオマーカーを参加条件に使った試験は58%、主要評価項目に使った試験は36%でした。患者選定に使う指標は、対象となる病理を持つ患者を組み入れ、試験結果を解釈する役割を担います。評価項目に使う場合は、介入の効果を判定する材料になります。
指標の測定法や検査基盤によって性能に差があり、異なる方法で得た結果を比べにくいことが課題です。血液中のNfLやGFAPは神経損傷や炎症に関係する指標ですが、アルツハイマー病以外の神経疾患でも変化するため、単独では病気を特定する力に限界があります。デジタル指標も、標準化や臨床での使い方が整備途上にあります。
AI創薬の臨床実績は成功率の証明と区別が必要
AIを使って設計された候補薬の臨床例として、Insilico Medicineのレンソセルチブがあります。2025年に報じられた特発性肺線維症の第2a相試験では、60ミリグラム群の努力性肺活量は平均98.4ミリリットル増加し、プラセボ群では20.3ミリリットル減少しました。
同試験では、肝障害または肝機能異常を理由に7人が治療を中止し、そのうち4人は抗線維化薬ニンテダニブを併用していました。高用量群では18人中12人が治療を完了し、完了率は67%でした。参加者数が少ないことや、参加者の地域・人種構成が均質であること、追跡期間が短いことも研究上の限界として挙げられています。
2024年のレビューは、AIが患者選定や試験設計を支援できる可能性を論じる一方、当時、AIが構想した薬で承認に至ったものがないことを業界の課題として挙げました。また、薬剤開発費のうち臨床試験が占める割合を約60%とし、試験の効率化がAI活用の対象になると整理しています。PathosはAIを使った判断支援を臨床段階の候補薬に適用する計画を進めています。個別の臨床結果と創薬全体の成功率は別の評価軸です。











