
30年後に見えた間伐区の変化
オーストラリア・ビクトリア州のマウンテンアッシュ林で、伐採方法を比べる長期実験の約30年後の状態が調べられました。強度の高い間伐を行った区画では、残った木が大きく成長し、木に蓄えられた炭素量は未伐採区と同程度か、それを上回りました。
マウンテンアッシュは、ユーカリ属の樹木です。調査対象の実験は1980年代後半に始まり、皆伐や異なる大きさの伐採地、樹冠を残す処理、未伐採区などを比較しました。
研究チームは53の調査区で、森林の構造や樹種構成、炭素貯留、生息環境などを評価しました。30年後、樹冠を残す処理区では、実験内で最も大きな木と大きな胸高断面積が見られ、木の大きさのばらつきも大きくなっていました。
伐採方法で異なる森林の再生
実験では、伐採後の森林の姿は処理方法によって異なりました。小規模な伐採地では小径のマウンテンアッシュとアカシアが多く、皆伐区や種木を残す処理区では、マウンテンアッシュの断面積が中程度で、木のサイズ分布が比較的そろっていました。
別の東ギプスランドの実験では、伐採地の広さや残す樹木の量が、ユーカリの発芽と苗木の定着に影響しました。種子の総発芽数は、残す樹木が多いほど、また伐採区画が小さいほど増えました。
その実験では、3年時点の苗木の生存率と平均樹高は、伐採区画が大きく、残す樹木が少ない処理ほど高くなりました。全処理区で再生は成立しましたが、伐採の程度が低い区画では、生存と成長が相対的に低い結果でした。
光や種子床が苗木の成長を左右
マウンテンアッシュの再生には、樹冠が開いて光が入ることに加え、発芽に適した地表が関係します。成熟林の観察研究では、上層の樹冠、低木、シダ層を含む大きな隙間が、再生の前提になると報告されました。
同研究では、種をまき、土壌をかき起こして光条件を整え、下層植生との競争を抑えた試みでも、10〜11年後にはマウンテンアッシュの再生が失敗しました。著者らは、苗木の成長には側方からの光が重要で、下層植生との競争も生存を左右すると記しています。
一方、東ギプスランドの実験では、残した樹木が多いほど種子の供給と発芽が増える傾向も示されました。伐採地を広げると苗木の生存や成長が高まる結果と合わせると、種子の供給と、その後の光環境の双方が再生に関わります。
炭素と生息環境をめぐる条件
今回のビクトリア州の実験について、間伐区では伐採で失われた炭素を30年で取り戻し、未伐採区で増えた量と同等以上の炭素を木に蓄えたと報告されました。最大の木の胸高直径は、未伐採の対照区より20%大きく、カメラ調査では、調べたすべての処理区でキタフクロモモンガが確認されました。
北米の研究を対象としたメタ分析では、間伐や燃焼処理は、皆伐や山火事と比べて炭素損失が小さい傾向でした。効果の大きさには炭素の貯留場所や処理後の経過年数などが関係し、分析対象の85%は米国とカナダの研究でした。
ブリティッシュコロンビア州の沿岸林を調べた研究では、燃料を減らす間伐は短期的に地上・地下の炭素量を変えず、下層の低木や草本の被覆と種数を増やしました。一方で樹木の多様性は低下し、皆伐では地上部の炭素量と多くの植物多様性指標が減りました。
一つの処理に限定しない管理
森林管理の結果は、樹種や森林の状態、処理方法によって異なります。ビクトリア州の実験では、樹冠を残す処理が大径木や複雑な森林構造につながった一方、小さな伐採地ではアカシアが多くなりました。
北米の沿岸林で見られた下層植生の増加と樹木多様性の低下は、間伐の効果が一様でないことを示す事例です。 ビクトリア州の研究チームも、単一の処理ですべての森林構造を再現することはできず、地域内で多様な施業方法を検討する必要があると論じています。
長期実験では、伐採直後の苗木の再生だけでなく、数十年後の木の大きさや炭素、生息環境の変化も比較できます。今回の調査は、マウンテンアッシュ林の管理で、皆伐以外の方法も含めて長期的な変化を評価する意義を示しました。










