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大気の機械学習モデル「ACE2」は、過去80年間の気温などの長期傾向を再現しながら、1日あたり約1,500年分のシミュレーションを実行できます。一方、海面水温や二酸化炭素濃度を個別に変えた場合の応答には、現実と一致しない部分も残っています。

ACE2が再現する大気の変化

ACE2はAi2 Climate Emulator version 2の略称で、気象や気候に伴う大気の変動を機械学習で模擬するモデルです。研究チームは、1940年から2020年までの大気を対象に、観測を基にした再解析データと気象モデルの出力を使って性能を調べました。

モデルは6時間ごとに計算を進め、緯度・経度方向に1度の解像度、鉛直方向に8層で大気を表します。パラメーター数は4億5,000万で、全球の乾燥空気と水分を厳密に保存しながら、長期間にわたって計算を続けられます。

1940年から2020年までのシミュレーションでは、ACE2は参照データの長期的な気温傾向を追い、年ごとの変動も再現しました。ただし、2メートル気温や大気中の総水分量の年々変動は、参照データよりやや小さくなりました。

学習に使うERA5再解析データ

ERA5は、地上や衛星などの観測と数値気象予報モデルを組み合わせ、大気の状態を全球で一貫して推定する再解析データです。観測地点の値をそのまま並べたものではなく、観測のない場所も含めて大気の状態を格子ごとに推定します。

ERA5では、物理法則に基づくデータ同化によって、観測値とモデル計算を組み合わせます。観測の質や偏りを考慮し、観測網がまばらな地域でも推定値を作ります。ACE2のERA5学習版はこの再解析データを使って学習し、気温や水分量の長期傾向などが評価されました。

ERA5の記録は1940年までさかのぼりますが、初期の観測網は現在より限られていました。1940年代前半には衛星データがなく、南半球の地上観測も少なく、1940年代半ばより前は上空の観測もありませんでした。ECMWFは、こうした時期の推定精度は地域や期間によって異なり、1940年時点では北半球の広い範囲で実際の総観規模の状況をよく推定できると説明しています。

物理モデルとの組み合わせ方

ACE2は大気の変化をデータから学ぶモデルで、研究ではERA5のほか、米国海洋大気庁の地球流体力学研究所が開発したSHiELDのシミュレーション出力でも学習しました。ACE2は海面水温を境界条件として受け取り、二酸化炭素濃度も外部要因として扱います。

NeuralGCMは、流体力学を計算する物理モデルの核と、雲など小規模な現象を扱うニューラルネットワークを組み合わせたハイブリッド型です。ACE2が大気の振る舞いをデータから学習するのに対し、NeuralGCMは大規模な空気や水分の移動を物理計算で扱い、小規模な過程をニューラルネットワークで補います。

NeuralGCMでは、物理計算と機械学習部分を連携させ、複数の時間ステップを通した最適化を行う方式が採られています。先行する比較研究では、NeuralGCMのシミュレーションの約3分の1が30年に達する前に不安定化したと報告されました。これはその比較研究での結果であり、モデルの構成や実験条件を踏まえて評価する必要があります。

長期シミュレーションで残る課題

ACE2は、エルニーニョに伴う大気の応答や、過去80年間の全球気温の傾向を再現しました。また、熱帯低気圧やマッデン・ジュリアン振動、成層圏突然昇温などの現象も生成しました。

一方で、海面水温と二酸化炭素をそれぞれ別々に変化させた場合の応答は、完全には現実的ではありません。研究チームは、過去の変動や傾向を再現する能力と、これまでにない条件への応答を適切に予測する能力が別の課題であることを示しています。

機械学習による高速化は、長期間のシミュレーションや多くの条件を試す研究に計算上の余地をもたらします。ただし、ACE2の実験結果は、気候変動のあらゆる条件で正確な予測ができることを示すものではありません。