Palette pipeline: plan → designer → coder → check & repair → deck
出典: Hugging Face Blog

IBM Researchは、IBM Design Languageに沿ってスライドを作る20B規模のオープンウェイトモデル「Palette」を開発しました。構成を考える役割と各スライドを描画する役割に分け、生成後にレイアウトを検査して修復します。PresentBenchの3領域で評価した結果、経済と教育で1位、トーク形式で3位となり、3領域の平均はNotebookLMに次ぐ2位でした。

構成案と描画を分けてスライドを生成

Paletteは、1つのモデルが内容の整理と配置を一度に担うのではなく、デザイナー役とコーダー役に処理を分けます。デザイナー役は、配色や書体、各スライドのレイアウトと内容、設計理由を含むJSON形式のブリーフを作成します。コーダー役はその指定を受け取り、スライドを描画するJavaScriptコードを書きます。

ブリーフにはスライドごとの仕様がまとまっているため、人や別のエージェントが特定のスライドだけを変更できます。また、全スライドの仕様を先に固めてから描画するため、各スライドのコーディングを並行して実行できます。IBM Researchによると、コーディング段階は約6〜7倍速くなりました。

利用者は「タイムラインにする」「価格を載せない」などの短い指示を、計画文に指定の形式で加えられます。学習データには、レイアウト、語調、対象読者、順序、除外、強調など12カテゴリの指示が含まれ、異なる表現でも意図に沿うよう訓練されています。

約1,000件の合成データで学習

学習用データには、オープンな大規模モデルを使って作成した約1,000件のデッキと、約10,000枚のスライドが含まれます。デッキの題材や長さ、レイアウト、利用者の指示をレシピで指定し、整ったアウトラインから未整理の素材まで、さまざまな入力を用意しました。

各例には、選んだ構成に加え、別案を退けた理由も記録されています。たとえば、四半期ごとの売上を示す場合、正確な数値より推移が要点なら、表ではなく棒グラフを選ぶといった判断の筋道を学習させます。配置の例では、タイトルの長さと文字サイズから折り返しを見積もり、グラフとの重なりを避ける考え方を扱います。

Paletteの追加学習にはLoRAを使いました。LoRAは、基礎モデルの重みを固定したまま、小さな低ランク行列を加えて新しい用途に適応させる手法です。全パラメーターを再学習する場合と比べ、学習対象のパラメーター数とGPUメモリーの負担を抑えられます。IBM Researchは、LoRAによって基礎モデルの能力を保ちながら形式と技能を教え、実験コストも抑えられたと説明しています。

検査で重なりやはみ出しを修復

生成したデッキは検査用のハーネスに通します。色コードの書式など、既知の問題を簡単なルールで直した後、各スライドを描画し、文字や図形の重なり、切れ、スライド外へのはみ出しを調べます。

問題が見つかったスライドは、別の編集モデルがコードを書き直します。修正は、再検査で改善が確認できた場合にのみ採用します。改善しなければ元のスライドを残すため、修復処理で出力が悪化しない設計です。

PresentBenchのデッキ131件を使った比較では、ハーネスを通すことで平均スコアが3.5ポイント上がりました。学習データの作成時にも同じ検査を使い、問題のあるスライドを修復してから訓練例に加えています。IBM Researchは、指示文に規則を追加するより、参照デッキ自体を直すほうが生成結果を変えやすかったと報告しています。

PresentBenchでは3領域の平均が2位

PresentBenchは、背景資料に基づくスライドデッキ生成を評価するベンチマークです。各課題には平均54.1項目のチェックリストがあり、各項目について条件を満たしたかどうかを判定します。チェック項目は課題ごとに作られ、内容や条件に応じて評価します。

採点では、評価モデルが各項目を個別に判定し、項目の達成率を評価軸ごとに集計します。評価軸は、プレゼンテーションの基本、視覚デザインとレイアウト、内容の網羅性、正確性、資料への忠実性の5つです。最終スコアは5軸の平均で、達成率を百分率で表す100点尺度です。

Paletteは経済と教育で1位、トーク形式で3位となり、3領域の平均は59.7点でした。NotebookLMの60.8点に1.1ポイント届かず、比較対象の他システムを上回る2位です。IBM Researchによると、物語性やスピーチ向けの構成が中心となるトーク形式では、クローズドな2システムがPaletteを上回りました。

次の段階は生成前の誤り削減

現在のハーネスは、生成後にスライドを検査して修復します。IBM Researchは今後、描画や重なり、内容の根拠を確かめる同じ検査を、強化学習の報酬にも使う考えを示しています。スライド単位で独立して確認できる構成を、その学習に生かす計画です。

また、資料内の図表を抽出してスライドに配置する方法や、既存のPowerPointファイルを1〜2点使い、再学習なしで出力の見た目を合わせる方法も検討しています。