
オックスフォード大学サイード・ビジネス・スクール向けに、使われていなかった発電所を学習・宿泊施設「グローバル・リーダーシップ・センター」へ改修しました。歴史的なれんが造の外壁を残し、建物内部や上層部を再構成して、学習・交流・滞在の場を一体化しています。

発電所の骨格を残し、上層部を再構成
対象となったオズニー発電所は1892年に開設され、オックスフォード初の発電所として使われました。ジョン・マクアスラン+パートナーズは、川側のれんが造の外壁を保存し、軽量な金属造の上層部分を改築・増築しました。

上層部には120室の宿泊室を設け、灰色の穴あき金属で覆っています。設計事務所によると、この外装は室内に光を通しながら、近隣住民のプライバシーにも配慮しています。

低層の増築部には既存の建物と呼応するれんがを用い、周辺の住宅街の規模に合わせました。外観では、重厚なれんが造の基部と軽やかな金属造の上層部の対比が引き継がれています。

タービンホールを学びと交流の場に
かつてのタービンホールは、3層吹き抜けのエントランスホール兼共有空間に転用されました。設計事務所はこの空間を「アゴラ」と位置づけ、教室外での交流や非公式な学びに使う計画です。
内部には既存の鉄骨トラス、むき出しのれんが壁、ガントリークレーンを残しました。新設した木とガラスの階段、ブリッジ、バルコニーが、ホール内の移動や各階とのつながりをつくります。
建物中央には中庭を設け、内部に自然光を取り込みます。中庭からは高さのある図書室にも視線が伸び、共有空間や授業室、宿泊室とともに、学習と滞在の機能を同じ施設に収めています。
断熱改修とヒートポンプを採用
建物には断熱性と気密性を高める改修を施し、太陽光発電パネルと空気熱源ヒートポンプも設置しました。ヒートポンプは、熱を生み出すのではなく、低温側から高温側へ移す装置です。
暖房時には、外気から取り込んだ熱を冷媒に移し、圧縮して温度を上げてから室内へ運びます。冷媒は、圧縮されると温度が上がり、膨張すると下がる性質を利用して循環します。
給湯では、空気から集めた熱を水に伝えてお湯をつくる方式があります。空気熱源の仕組みでは、外気の熱を取り込む熱交換と冷媒の圧縮を経て水を加熱し、冷媒を膨張させて再び熱を取り込める状態に戻します。
外壁の保存と炭素負荷の考え方
設計事務所は、歴史的な外壁を残す一方、既存の軽量な内部シェッドは建て替えました。エネルギー解析の結果、性能の低い既存部分を残すより、建て替えて高効率な外皮を設ける方が長期的な炭素性能に優れると判断したためです。
建築物のライフサイクル炭素評価では、建設時だけでなく、維持管理や解体の段階も対象になります。資材の製造・施工などに伴うエンボディドカーボンと、建物の使用時に生じるオペレーショナルカーボンを合わせて評価します。
ゼロカーボンビル推進会議は、既存建物の改修・用途変更や歴史的建造物の保存を、ライフサイクル炭素削減の手法として整理しています。一方、外皮の断熱性能を高める際は、使用時の排出を減らす効果と、材料の製造などに伴う排出との兼ね合いを考慮します。











