
ボーン三部作がNetflixで配信
Netflixでは『ボーン・アイデンティティー』が配信されています。マット・デイモン主演の2002年作で、記憶を失った男が自分の過去とCIAとの関係を探る物語です。 Polygonは、シリーズの主要3作がNetflixで配信開始したと伝えています。
シリーズの出発点となった『ボーン・アイデンティティー』は、ロバート・ラドラムの小説を原作とし、ダグ・リーマンが監督しました。続く『ボーン・スプレマシー』(2004年)と『ボーン・アルティメイタム』(2007年)はポール・グリーングラスが監督しています。
物語の中心にいるジェイソン・ボーンは、地中海で救助された後、自分の名前も過去も思い出せません。一方で、複数の言語を話し、追跡をかわし、戦闘に対応する能力を身につけています。自分が何者なのかを追う過程と、CIAの暗殺計画との対立が三部作を貫きます。
記憶と身体能力のずれを描く物語
『ボーン・アイデンティティー』では、ボーンがスイスの銀行口座や複数の偽造旅券を手がかりに過去を探ります。身体は危険への対処を覚えているのに、本人にはその理由が分からないというずれが、物語の出発点です。
続編では、インドで恋人を失ったボーンが再び事件に巻き込まれ、『ボーン・アルティメイタム』では陰謀が本人の過去にさらに近づきます。Polygonは、三部作の核を、殺人者として訓練された人物がその過去から離れようとする葛藤に置いています。
シリーズには後年の作品もあります。『ボーン・レガシー』はジェレミー・レナー演じるアーロン・クロスを主人公に据え、2016年の『ジェイソン・ボーン』ではデイモンが復帰しました。Polygonはこの2作について、アクションの形式を引き継ぎながらも、初期三部作の人物の葛藤とは異なる作品になったと評価しています。
格闘を短いカットで組み立てる
『ボーン・アイデンティティー』から三部作にかけての格闘場面は、手持ちカメラと細かなカットで知られます。Polygonの分析によると、三作品の格闘シーンは合計でも6分に満たない一方、その見せ方は多くの映画に模倣されました。
同分析は、編集が動作の衝撃そのものを省くのではなく、打撃が届く直前や直後へ切り替える点を挙げています。『ボーン・スプレマシー』でボーンがCIA職員の腕をつかむ場面では、動作の一部を短く重ねて見せた後、拳が当たる直前へカットします。打撃の瞬間を残しながら前後を切り詰めることで、動作の速さを感じさせる手法です。
この編集は、戦闘の状況を広い画面で一度に見せる方法とは異なります。Polygonの説明では、相手の動きを通して見せる一方でボーンの動作を細かく切る場面があり、彼が相手より速く動く印象につながります。また、『ボーン・アルティメイタム』のデシュとの戦いでは、優位に立つ人物に合わせてカットの仕方が変わり、攻防の移り変わりを表現しています。
手持ち撮影が演出する不安定さ
『ボーン・スプレマシー』では、手持ちカメラの揺れや急なズームが、アクションだけでなくCIAの作戦室にも使われています。Polygonの分析は、長い望遠レンズによる圧縮された画面や、人物を追うカメラの動きを、監視される感覚と結びつけています。
No Film Schoolは、カメラの揺れを無作為な動きではなく、殴る動作に合わせてカメラが反応する撮影として説明しています。編集では、ナイフや視線、銃などの短い映像をつなぎ、広い状況説明の代わりに場面の手がかりを積み重ねます。これらの切り替えによって、観客は空間を一望するより、登場人物が受け取る断片的な情報に近い形で戦闘を追います。
同作のベルリンのアパートでの格闘では、家具などの日用品が武器になり、狭い室内での消耗が描かれます。No Film Schoolは、カメラの動きと短いショットが戦闘の疲労を伝え、動きの美しさよりも消耗を前面に出すと分析しています。揺れや高速編集はそれだけで現実味を生むのではなく、人物の混乱や場面の動きに結びつけて使われています。
『カジノ・ロワイヤル』で変化したボンド像
2006年の『カジノ・ロワイヤル』は、ジェームズ・ボンドの新たな連続性を始める作品として作られました。Spy Commandによると、製作を担うイーオン・プロダクションズのバーバラ・ブロッコリとマイケル・G・ウィルソンは、ダニエル・クレイグを新たなボンドに起用し、従来作から方向を変えました。
Fiction Machineの論考は、同作が『ボーン・アイデンティティー』や『ボーン・スプレマシー』の影響を受けたと説明しています。論考によれば、ボンドの再出発では、若く未熟で失敗もする人物として描く構想が採られました。シリーズの初期にはなかった、ボンドがどのように現在の人物になったかを描く物語も組み込まれています。
Spy Commandは、『カジノ・ロワイヤル』の作風を従来作より硬質なものと位置づけ、銃身を模したロゴを冒頭ではなくタイトル直前に置いた演出にも、新しい方向性が表れていると記しています。 ボーン三部作では、戦闘の切迫感と、殺人の訓練を受けた人物の葛藤が結びついています。後続作への影響として挙げられるのは、手持ち撮影や速い編集だけではなく、スパイを無敵の存在ではなく、傷つき、迷う人物として描く変化です。










