Magic Mushrooms
写真: Culebe / CC0 / Wikimedia Commons

5研究室のデータで持続効果を検証

UCバークレー校、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、スタンフォード大学の5研究室が、マウスにシロシビンを投与する同じ実験を行いました。単回投与から24時間後までの行動を調べたところ、不安やうつに似た行動の低下、恐怖反応や社会的な行動の変化は、研究室をまたいで再現されませんでした。

研究者らは、過去に報告された持続的な変化を一律に否定したのではなく、今回の投与量や実験条件では効果が小さいか、一貫しなかった可能性を示しました。成人マウスで社会的報酬を学習する能力に関わる「臨界期」が再び開くという仮説についても、裏付けは得られませんでした。

実験では体重1キログラムあたり2ミリグラムを投与し、5研究室で同じ行動試験を実施しました。試験方法の要点をそろえながら、実験箱の大きさや測定時刻など、一部の条件は研究室ごとに異なる設定でした。

投与直後には共通する反応

持続的な変化が再現されなかった一方、投与直後には複数の研究室で共通する反応が見られました。投与から約10分後には不安や回避に関係する行動が増え、恐怖の表出は低下しました。

マウスの頭が短く跳ねる「ヘッドツイッチ」も、5研究室すべてで確認された行動です。研究では、投与後20分間の反応を観察し、投与直後に薬が行動へ影響したことを確かめました。

研究チームは、こうした急性反応を脳内の神経回路を調べる手掛かりとしています。どの脳の領域や回路が関わるか、また、その反応が後の行動にどう結び付くかは、今後の研究課題です。

マウスの行動試験が抱える限界

研究室ごとの結果には、統計的に有意と判定されるかどうかの違いもありました。全データでは持続的なうつ様行動の低下が再現されなかった一方、2研究室では、抗うつ薬の評価によく用いられる2種類の試験のうち1つで有意な効果が見られました。

その試験の一つでは、マウスを水に入れ、泳ぐのを早くやめる行動をうつに似た状態の指標として扱います。人間の複雑なうつ症状を、このような行動課題だけで捉えることには限界があると、研究者は指摘しています。

また、幻覚薬への反応には人の心の状態や社会的な環境も関わるとされます。マウスの行動試験では、人間の体験や認知の変化をそのまま再現できず、動物実験で得た結果から人の治療効果を直接判断することはできません。

ヒトの試験とは評価期間も指標も異なる

ヒトを対象にした別の第2相試験では、長期間にわたる中等度から重度の大うつ病性障害の患者59人を、シロシビン群とエスシタロプラム群に分けました。両群とも心理的支援を受け、シロシビン群には25ミリグラムを3週間隔で2回投与し、試験全体の評価期間は6週間でした。

主要評価項目は、16項目の自己記入式うつ症状尺度「QIDS-SR-16」の開始時から6週目までの変化です。平均スコアの変化はシロシビン群がマイナス8.0点、エスシタロプラム群がマイナス6.0点でしたが、この指標では両群の抗うつ効果に有意差は示されませんでした。

この臨床試験は、投与から24時間後のマウスの行動を調べた実験とは、対象も評価期間も指標も異なります。副次評価では反応率や寛解率がシロシビン群で高かったものの、多重比較の補正は行われておらず、研究者らはより大規模で長期間の試験が必要だとしました。