
「絶滅種」とされた大型の骨を再分類
ヨーロッパで2万年以上前に生息したとされる大型のツルは、絶滅した別種ではなく、現生のナベヅルの大型個体だったとする研究結果が発表されました。19世紀に「グルス・プリミゲニア」と名付けられた骨の正体を、古代DNA解析で見直しました。
フランス南部の洞窟で見つかった骨片は、氷期の終わりごろのものと年代づけられました。大きさや形状から、現生種とは別の巨大なツルがいたと長く考えられてきました。
今回の研究では、英国、フランス、ドイツ、ウェールズ、バレアレス諸島で見つかったツルの骨18点から古代DNAを抽出し、種を調べました。研究チームは、骨が独立した絶滅種ではなく、現在ヨーロッパに生息するナベヅルの大型個体に由来すると結論づけています。
骨の大きさだけでは種を分けにくい
化石の骨を分類する際は、骨の形や測定値が手がかりになります。ただし、近縁種では測定値が重なることがあり、骨が欠けていると形態的な特徴を比較しにくくなります。
古代DNA解析は、死後に残った遺伝物質を調べる方法です。DNAは時間とともに短く断片化するため、古い骨では通常の長い遺伝子領域を増幅できないことがあります。古代DNAは、断片的な動物の遺骸を分類する手段としても活用されてきました。
鳥の骨を調べる研究では、ミトコンドリアDNAにある16S領域の短い部分を増幅・配列決定する方法が開発されました。この領域には、幅広い鳥類群に共通する部分と、種の識別に使える変異の多い部分があります。研究者は得られた配列を参照データと照合し、骨の種を判定しました。
雌雄差が「巨大種」の見方に影響した可能性
今回の研究を率いたボーンマス大学のジョン・スチュワート教授は、ナベヅルには大型の雄と小型の雌がいるため、骨の大きさの違いが別種の証拠とみなされた可能性を挙げています。
従来の研究では骨の大きさと形が主な手がかりでしたが、今回のチームはDNA解析から、骨の持ち主が現生のナベヅルに属すると判断しました。
チームは、ナベヅルが小型化した理由を今後調べる方針です。湿地の排水や人間による土地利用の変化を候補に挙げ、原因の解明にはさらなる研究が必要だとしています。
DNA解析による再分類の先例
骨の大きさの違いを理由に絶滅した別種とされていた鳥が、DNA解析で現生種に近いと判明した例はほかにもあります。オーストラリアのキング島に生息していた絶滅エミューを調べた研究では、亜化石の遺骸から核DNAとミトコンドリアDNAを解析しました。
その研究で得られたキング島エミューの遺伝型は、現生エミューの遺伝的多様性の範囲に含まれていました。研究者らは両者の近縁性を踏まえ、キング島エミューを現生エミューの亜種として扱うのが適切だと結論づけました。
過去の絶滅種の数え方にも関わる
ボーンマス大学の研究チームは、骨の大きさの違いだけを根拠に分類された別の絶滅鳥類についても、種の同定に問題がある可能性を指摘しています。古代DNAによる調査が、そうした分類の確認に必要になる場合があるとしています。
スチュワート教授は、過去の絶滅数が実際より多く見積もられている可能性にも言及しました。絶滅種とされた鳥の一部が、現生種の体格変化を示すものかもしれないという見方です。
研究チームは、ナベヅルの体格が小さくなった時期や要因の調査を続ける予定です。研究成果は「Royal Society Open Science」に掲載されました。










