タイのチェンマイ大学とカセサート大学の研究チームは、タイ北部の庭や野生の花から、アウレオバシディウム属の菌類16新種を発見しました。 既知の5種も見つかり、そのうち4種はタイで初の記録です。 外見のよく似た菌を区別するため、研究チームは5つの遺伝子領域のDNA解析に、顕微鏡観察や生育試験を組み合わせました。

31種の花から54菌株を採集

アウレオバシディウム属は、暗い色をした酵母に似た菌類のグループで、人の皮膚から氷河の氷まで幅広い環境に生息しています。 研究チームは2024年の調査で、ブーゲンビリア、バターデージー、ニチニチソウなど31種の花から、培養して調べる菌の集まりである「菌株」を54株採集しました。

研究チームが識別したのは、新種16種と既知の5種です。 この調査によって、タイで知られる同属の種数は従来の5倍を超えました。 研究成果は2026年8月3日、学術誌『IMA Fungus』に掲載されました。

研究に参加したチェンマイ大学のナカリン・スワンナラット教授によると、調査のきっかけは、花の試料からアウレオバシディウム属が頻繁に分離されたことでした。 分離した菌には、培養時にできる菌の集落であるコロニーの形や、その他の観察できる性質に大きな違いがあり、従来認識されていた以上に種が多様だと考えたといいます。

外見だけでは区別しにくい菌をDNAと生育条件で調べる

新種の識別では、多くの菌が顕微鏡で見てもほぼ同じ姿をしていたことが課題になりました。 種の識別に通常使われるDNA領域だけでも、十分に区別できなかったとスワンナラット教授は説明しています。

そこで研究チームは、5つの遺伝子領域の解析に、形態、生理的な性質、生育温度のデータを組み合わせました。 スワンナラット教授は、複数の遺伝子領域とこれらの特徴を併せて検討することで、近縁な種をより正確に区別できたと説明しています。

同属で外見による識別に限界がある点は、木材表面に生息する菌を調べた研究でも報告されています。 この研究では、菌株ごとに観察される性質が変わるため、形態だけでは種を識別しにくいことを踏まえ、ITSとRPB2というDNAの領域をPCRで増幅し、サンガー法で塩基配列を読み取って種を調べました。 花を対象にした今回の調査とは解析する領域の構成が異なりますが、どちらも形態の観察にDNA解析を組み合わせて、同属内の種を識別しています。

花や採集地、菌類研究者に由来する新種名

新種の多くには、見つかった花にちなんだ学名が付けられました。 例えば、Aureobasidium bougainvilleaeはブーゲンビリアに、A. catharanthiはニチニチソウ属を表すCatharanthusに由来します。 採集地にちなむ名前には、チェンマイを指すA. chiangmaienseや、パヤオ湖を指すA. kwanphayaoenseがあります。

2種はタイの菌類研究者に敬意を表して命名されました。 A. saisamorniaeはチェンマイ大学のサイサモーン・ルムヨン教授、A. savitreeaeはカセサート大学のサウィトリー・リムトン教授に由来します。 スワンナラット教授は、菌が見つかった場所や、タイの菌類研究を進めてきた人々を名前に反映させたと説明しています。

自然に生息する種の記録を今後の監視に生かす

アウレオバシディウム属には、有用な酵素の生産、植物の病気の抑制、プラスチックの分解といった用途で産業上重視される種があります。 一方、一部の種は日和見感染との関連が知られています。日和見感染とは、免疫力が低下した場合などに起こる感染です。

研究チームは、自然にどの種が生息しているかを正確に記録することが、将来、菌の振る舞いの変化を捉えて対応するために役立つとしています。 スワンナラット教授も、複数の遺伝子領域から菌の系統関係を調べる手法は、新種に名前を付けるだけでなく、菌類の集団を理解し、継続的に監視するための基礎情報を得る手段になると説明しています。