生成AIで制作された非公式ブラウザゲーム「Fallout: New York」は、ZeniMax Mediaから知的財産権侵害に関する通知を受け、公開を停止しました。 AIによる既存ゲームの再構築や、異なるゲームを組み合わせるModでも、権利者の申し立てによってプレイ動画が削除されています。 これらは、独立したゲームの制作、既存コードの再構築、複数作品の連携という異なる方法で作られています。
「Fallout: New York」は名称と内容を変更して再公開へ
制作者のChris First氏は、AnthropicのAIモデル「Claude Opus 5.5」を使い、ブラウザで遊べる「Fallout: New York」を制作したと説明しています。 AIエージェントにコード作成を任せる、いわゆるバイブコーディングを用いた作品で、クエストや対話に加え、『Fallout』シリーズのシステムであるV.A.T.S.やPip-Boyに相当する要素も備えるとしています。
First氏によると、開発ではClaude Opus 5.5が最大12のAIエージェントを同時に動かす体制を組みました。 建物、武器、キャラクターの顔、音などはコードで生成し、テクスチャやサウンドのファイルを使わず、本家のゲーム素材も使用していないと主張しています。
一方、Bethesda Game Studiosの親会社であるZeniMax Mediaは、通知で『Fallout』関連の素材と「Fallout」の商標の使用を問題としていました。 First氏は公開を停止したうえで、知的財産権に抵触しうる名称や要素を削除し、ストーリーも書き直した新バージョンを再公開する方針を示しています。
『Modern Warfare 2』のコード再構築でも動画が削除
ソフトウェアエンジニアのMaurice Heumann氏は、2009年発売の『Call of Duty: Modern Warfare 2』の実行ファイルなどを解析し、複数のAIエージェントでC++コードとして再構築するプロジェクトを進めていました。 この作業は逆コンパイルと呼ばれ、実行ファイルから元のコードに近い形を復元するものです。
Heumann氏は、ゲームがプレイ可能になり、目に見える不具合のほとんどが解消したと報告しました。 また、70%以上の関数が元の実行ファイル内の関数と一致していると主張し、オリジナルのソースコードに近いのではないかとの見解を示しています。
投稿したプレイ動画には、連続撃破による報酬「戦術核」を再構築版で初めて発動できた場面が含まれていましたが、動画は著作権者の申し立てによって削除されました。 進捗を公開していたサイトにもアクセスできなくなり、ブログの関連投稿も非公開になったとされています。
「SkyCraft」は二つのゲームを同時に動かす方式
Modは、ユーザーがゲームにコンテンツを追加したり、バランスや表示などを変更したりする仕組みです。 『Skyrim』や『エルデンリング』を、『マインクラフト』の画面表示や操作の要素と組み合わせる「Passthrough Mod」も登場しています。
『Skyrim』と『マインクラフト』を組み合わせる「SkyCraft」では、両方のゲームを同時に起動し、Modを介してリアルタイムで情報をやり取りします。 移動、戦闘、インベントリなどを『マインクラフト』側で処理し、『Skyrim』側の世界、登場人物、クエストと組み合わせる構成です。
公開されているこの方式のModは、ゲームから抜き出した3Dモデルや画面表示の素材をModデータに含めて配布する仕組みではないとされています。 一方、ゲームを組み合わせる別の方式には、パッケージ版から取り出したゲームデータが必要なものもあります。 『エルデンリング』の世界を『スーパーマリオ64』のマリオで遊ぶModの紹介動画でも、一部が権利者の申し立てによって削除されています。
公式ツールと公開規約が定める制作・配布の条件
Bethesda Game Studiosは、『Skyrim』向けの公式Mod制作ツール「Creation Kit」を無料で提供しています。 ツールの利用にはPC版『Skyrim Special Edition』が必要で、制作したModをBethesda.netで他のプレイヤーと共有できます。 元ゲーム向けの追加コンテンツを作るこの仕組みに対し、First氏の「Fallout: New York」はブラウザで遊ぶ独立した作品として公開されていました。
ZeniMaxは、コンテンツ販売・配布サービス「Bethesda Creations」の提供者向け契約で、Creation Kitで作る追加コンテンツなどを同社へ承認のために提出する仕組みを定めています。 対象は、Bethesda Creations経由で販売・配布し、対象のBethesda作品で利用するコンテンツです。
『マインクラフト』を連携させるModに関係する条件として、MojangとMicrosoftは、利用許諾契約で購入したJava EditionをMod、ツール、プラグインで変更することを認めています。 ただし、Modは制作者の独自作品であり、両社の著作権で保護されるコードやコンテンツの相当部分を含まないものと定義しています。
両社は同契約でModそのものの配布を認める一方、Modを組み込んだゲーム本体やサーバーソフトの配布を禁止しています。 また、独自に作ったModの販売や収益化を認めず、第三者のツールやサービスが公式のものに見えないことも条件としています。
AI普及以前のファンゲームにも配布停止の事例
既存ゲームを題材にした非公式作品の配布停止は、生成AIを使う今回の事例より前にも起きています。2016年には、ファン制作の『Pokémon Uranium』の開発者が、ゲームの公式ダウンロードリンクの提供を停止しました。
開発者は、Nintendo of Americaを代理する弁護士から複数の配布サイトに削除通知が届いたことを知り、リンクの提供をやめたと説明しています。 開発者自身には直接連絡が来ていなかったものの、権利者の意向を尊重するとして配布を停止しました。








