
5,070万化合物から92候補へ
エルサレム・ヘブライ大学の研究チームは、機械学習と分子モデリングを組み合わせ、約5,070万個の化合物から甘味料候補92種を選びました。苦味が予測される化合物を除き、甘味が予測される分子を優先した計算上の選別です。
候補の絞り込みには、研究チームが開発した機械学習アルゴリズム「反復確率的消去法(ISE)」を使いました。既知の甘味物質と苦味物質を基にしたモデルで、化合物の分子特性から甘味や苦味の傾向を予測します。
研究チームは、約5,070万分子を含む3つの化学データベースを調べ、まず556種を甘味候補として残しました。その後、予測された性質などを基に優先順位を付け、実験で検証する候補を92種に絞りました。
分子の結合を受容体の構造から予測
甘味は、舌などにある甘味受容体T1R2/T1R3が糖や甘味物質を検知することで生じます。この受容体はT1R2とT1R3という2つのタンパク質サブユニットから成り、分子を認識する細胞外領域などを備えています。
甘味物質が結合すると、受容体の細胞外領域の形が変わり、細胞内の信号伝達につながります。2025年に報告された構造解析では、スクラロースがT1R2の結合領域に収まると、その領域の開きが狭まる構造が観察されました。
分子ドッキングは、候補分子が受容体の構造にどう結合しうるかを計算で調べる手法です。研究チームは甘味の予測に加え、候補分子とヒト甘味受容体との結合をシミュレーションし、候補をさらに選別しました。
甘味物質ごとに異なる結合部位
T1R2/T1R3には複数の結合部位があり、分子によって結合先が異なります。ショ糖はT1R2とT1R3の両方の細胞外領域に結合する一方、スクラロースやアスパルテームは主にT1R2側の領域に結合すると報告されています。
結合部位は細胞外領域に限らず、膜を貫通する領域にもあります。ステビア由来成分などを対象にした研究では、実験と計算ドッキングを組み合わせ、複数の結合場所が調べられました。
ドッキングは、候補分子と受容体の結びつき方を評価する材料になります。結合予測だけでは人が感じる甘さや味の質は分からず、実験で評価します。
92種は実験による確認が必要
今回の92種は計算モデルで選ばれた候補で、実際に感じられる甘味や苦味の程度は、実験で確かめる必要があります。研究チームは、甘味の確認に加えて安全性を評価し、食品への使用に適するかを調べる必要があるとしています。
候補の多くは、既知の甘味料とは異なる化学構造を持つと分析されました。









