
生成AIを使った後処理が規則違反に
ニコンは「Small World in Motion」2026年コンテストで1位となった動画について、生成AIに関する応募規則に適合しないと判断し、受賞を取り消しました。順位を改定し、Nguyen Nam Nhat氏の動画を新たな1位としました。ニコンは今後の応募に向け、規則と審査手順を見直す方針です。
対象の動画は、呼吸器疾患PCDのある子どもの気道に見られる、繊毛と呼ばれる毛状の構造の動きを撮影したものとされていました。応募者のDr. Ning Xu氏は、再構成したグレースケール画像から特徴を判別・可視化するため、教師なしニューラルネットワークを使ったAI支援の後処理を行ったと説明しています。
ニコンは、審査員にも相談しながら動画と関連資料を再評価したとしています。失格の判断はコンテスト規則上の応募資格だけに基づくもので、応募者の職業上の評価、科学的貢献、意図への判断ではないとも説明しました。
改定後の順位と今後の見直し
改定後の2位はドイツのBenedikt Pleyer氏によるクラゲの幼生、3位は米国のHoward Hughes Medical Institute・Janelia Research Campusに所属するDr. Andrew Moore氏による隣接細胞の同期した細胞分裂です。4位にはカメヅタの葉の細胞内にあるミトコンドリアと葉緑体の動き、5位にはウミウシの動画が選ばれています。
ニコンは、画像技術と人工知能の進歩が速く、今後の応募を扱ううえで新たな課題が生じていると説明しました。今回の判断を受け、Small WorldとSmall World in Motionの両コンテストで規則と評価手順を見直すとしています。
新たな1位の動画は、ベトナムのNguyen Nam Nhat氏が撮影した、微小な線虫と単細胞生物ディレプタスの映像です。ニコンの順位表では、微分干渉コントラスト法、対物レンズ倍率40倍と記載されています。
顕微鏡画像の超解像処理とは
光学顕微鏡の超解像処理は、計算によって画像の解像度を高め、通常の光学系では分けて見にくい細かな構造を捉える技術です。2024年の研究で報告されたZS-DeconvNetは、蛍光顕微鏡画像を対象に、回折限界を超える解像度向上を目指す手法です。
この手法では、低解像度の画像1枚、または画像スタックを使い、正解となる高解像度画像を追加撮影せずに教師なし学習を行います。研究チームは、適切に学習した場合、解像度を回折限界の1.5倍超に高められると報告しました。
Xu氏は、再構成画像への教師なしニューラルネットワークによる後処理を行ったと説明しています。画像の解像度向上や特徴の可視化を目的とする処理でも、コンテストの規則に照らした適格性は別に審査されます。
科学画像のAI利用をめぐるルール
科学出版のAI利用規則は、コンテストの応募規則とは異なる枠組みです。Springer NatureとScienceは、研究の一次証拠となる画像への生成AI利用を制限し、AI利用の開示を求める方針です。Auton AI Newsが両社の方針を紹介しています。Elsevierは説明用画像でのAI利用を認める場合も、図の説明文でツール名や利用方法などを開示する方針だとしています。Auton AI Newsはこの方針も伝えています。
Springer Natureの2026年方針では、生成AIによる画像の作成は原則認めず、写真のように見える生成画像を禁止しています。一方、実際の画像を組み合わせたり切り抜いたりする非生成型の加工は、開示を条件に認められます。GLE Insightsがこの方針を紹介しています。
同じ方針では、実データをスクリプトから描画したグラフは、制限対象の生成AI画像とは区別されています。また、AIによるパターンの特定や結果の解釈支援は注意を要する用途とされ、人の監督と開示が必要です。GLE Insightsがこうした方針を紹介しています。これらは出版物に関する方針であり、今回の失格理由はニコンのコンテスト規則への不適合です。











