
食用キノコのタンパク質から得た3種類のペプチドを食塩水に加えると、塩味の評価が高まることを研究チームが示しました。最も大きな変化は70.59%でした。
3種類のペプチドを選定
研究チームは、食用ブナシメジ(Hypsizygus marmoreus)のタンパク質を酵素で分解し、塩味を強める候補を探しました。ペプチドは、タンパク質を構成するアミノ酸が短く連なった分子です。
酵素処理で得た成分から6,092種類のペプチド配列を解析し、溶けやすさや安定性などの予測と機械学習を使って候補を絞りました。最終的に合成して味を調べた候補のうち、ASHGEGF、LDDGF、GDDWTの3種類で塩味を強める効果が確認されました。
14人の訓練を受けた評価者が、塩化ナトリウム水溶液にペプチドを加えた場合と加えない場合を比較しました。研究では、食塩水の濃度をそろえ、ペプチド濃度を1ミリリットル当たり1ミリグラムとして評価しています。
塩味の強さと持続時間
ASHGEGFを加えた試料では、塩味の評価が対照より70.59%高くなりました。LDDGFでは49.02%、GDDWTでは47.06%上昇しました。
ペプチドを加えた試料と対照では塩化ナトリウムの濃度が同じため、これらの割合は塩分削減率を示すものではありません。
塩味を感じる時間にも差がありました。ASHGEGFを加えた試料では75秒から105秒に延び、ほかの2種類では90秒でした。電気信号で味の違いを測る「電子舌」でも、3種類を加えた試料は対照より高い塩味の値を示しました。
TMC4との関係は分子モデルで検討
研究チームは、塩味に関わる膜タンパク質TMC4のモデルにペプチドを結合させる計算を行いました。分子ドッキングでは水素結合などを介した相互作用が予測され、分子動力学シミュレーションでも複合体の安定した結びつきが支持されました。
TMC4は、塩化物イオンを検知する塩味の受容に関わる電位依存性塩化物チャネルとして報告されています。2024年のレビューでは、TMC4が塩化物の味の受容に関与し、塩味の仕組みにはナトリウムだけでなく塩化物も関係すると整理されています。
TMC4に関する知見は、ペプチドが人の味覚細胞でどう働くかを実証するものではありません。今回の結合モデルも計算による予測で、研究チームは受容体や細胞を使った追加検証が必要だとしています。
食品での効果と安定性を今後検証
実験では合成ペプチドを使い、キノコそのものを料理に加えてはいません。
研究チームは今後、実際の低ナトリウム食品でペプチドを試し、塩分低減の可能性や官能評価、実用上の安定性を調べる予定です。食品の成分や調理、保存が効果に影響する可能性も、研究で挙げられています。食品で使える濃度や安全性も、今後の試験で検証する必要があります。









