Macronix - Nonvolatile Memory Solutions
出典: macronix.com

マクロニクスがゲーム向けROMの生産を終える方針を示しました。同社は任天堂のカートリッジ向け主要供給元とされており、代替調達や製造費の変化が、今後のパッケージ版の価格にも影響する可能性があります。

ROM生産の終了を決めた背景

マクロニクスは第3四半期の決算報告で、ROMの生産が終盤に達したとし、ゲーム業界から段階的に距離を置く方針を示しました。CEOの呉敏求氏もROM事業の縮小を認めています。

同社のROM生産量は前年から39%減り、売上に占める割合は前年同期の26%から5%に低下しました。第3四半期を最後にROMの売上を個別に開示しない方針も伝えられています。

マクロニクスの生産能力は月25,000枚の12インチウエハーに限られ、新たな生産能力を増やす計画には12億ドル(約1,900億円)を投じても、立ち上げまで1年以上かかる見込みです。需要が強く収益性の高いNOR型・NAND型メモリやeMMCに設備を振り向けると、ROMの生産枠を確保しにくくなります。

カートリッジ用ROMの役割

ROMは、記録した内容を読み出すためのメモリです。マスクROMでは製造時に回路の配線で情報を固定し、後から内容を書き換えられません。

マスクROMは大量生産時にチップ単価を抑えられるため、ゲーム機のカートリッジなど、まとまった数量を製造する用途で使われてきました。ゲームソフトの内容を固定したチップとして供給する仕組みです。

今回、設備の取り合いになっているNOR型・NAND型メモリやeMMCは、マクロニクスが生産を縮小するROMとは別の製品です。マクロニクスは、データセンター向けNORメモリの需要が新規顧客から寄せられていると説明しています。

代替調達と製造費への影響

任天堂が近い将来にカートリッジ生産をやめる方針を示したわけではありません。マクロニクス以外では、ロームやラピスセミコンダクタが残るROMの供給元として挙げられています。

供給元の切り替えや生産条件は、カートリッジの製造費に関わります。Nintendo Switch用カートリッジの製造費は、少量生産の場合に1本あたり12〜15ドル(約1,900〜2,400円)とされ、別の集計では16GB品が14.50ドル(約2,300円)です。

製造費以外にも、発注数量や流通に関わる費用があります。Nintendo Switch用カートリッジの最低発注数は3,000本、製造から納品までの期間は14〜18週間とされ、梱包・輸送・流通の費用は1本あたり4.20ドル(約660円)と見積もられています。

パッケージ版の価格と販売構成

一部の任天堂タイトルでは、パッケージ版が同じソフトのダウンロード版より高い価格で販売されています。カートリッジの生産費が上がれば、出版社が設定するパッケージ版の価格にも影響が及ぶ可能性があります。

一方、マクロニクスのROM生産縮小が、直ちにカートリッジの供給停止を意味するわけではありません。任天堂はカートリッジを近い将来に手放す予定はないとし、複数の供給元が残っています。

任天堂のソフト販売に占めるデジタル販売の割合は、2026年の第2四半期に61.5%でした。今後この割合が上がれば、ROMカートリッジへの需要が下がり、代替調達に伴うコストとのバランスが変わる可能性があります。